<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

銀行

均一な与信ポートフォリオの損失分布について

本ページでは、均一なローンから構成される与信ポートフォリオの損失分布の推計について検討したい。 まず、与信ポートフォリオの信用リスクについて、1ファクターマートンモデルを用いた推計方法を以下のページで紹介している。本ページはこれに基づいてお…

マートンモデルを用いたデフォルト確率の推定について

本ページでは、マートンモデルを用いたデフォルト確率の推定についてまとめたい。 このモデルでは、デフォルトは企業の資産価値が債務額を下回った場合に発生するという前提に基づいている。デフォルト確率は、ブラック・ショールズ・マートンの公式を使って…

構造型・誘導型の信用リスクモデルについて

本ページでは、信用リスクモデルにおける構造型と誘導型についてまとめたい。信用リスクモデルにおいては、与信先のデフォルト確率を求めることが主要な目的の一つとなるが、大きく分けて構造型と誘導型の二つのアプローチがある。 構造型モデルにおいては、…

コピュラの考え方とリスク管理への応用例について

本ページでは、コピュラの考え方とリスク管理への応用例についてまとめたい。 コピュラの理解のための下準備 まず、コピュラの理解には同時分布に関する知識が必要となるため、以下のページを参照されたい。 hongoh.hatenablog.com そのうえで、後に登場する…

1ファクターマートンモデルを用いた与信ポートフォリオのリスク計測について

本ページでは、1ファクターモデルを用いた与信ポートフォリオのリスク計測方法についてまとめたい。 複数のローンからなる与信ポートフォリオの損失分布を推計することを考える。通常、個々のローンのデフォルト確率には相関が認められるため、相関を考慮し…

銀行におけるALMの考え方についてメモ

銀行におけるALM(Asset Liability Management)について。 銀行のバランスシートを見ると、一般に短期間での調達(負債)によって長期の運用(資産)を行っているという構造になっており、期間のミスマッチが存在している。 このミスマッチによって、金利リ…

コベナンツとは何か

本ページでは、コベナンツとは何かについてまとめたい。 コベナンツとは、社債発行や融資による借り入れを行う際、契約書に盛り込まれる債務者が負う義務や制限に関する条項のことである。 コベナンツが設定される場合 典型的には以下のようなケースでコベナ…

リコースローンとノンリコースローンについて

ローンを契約するとき、保有している土地を担保にとることがある。もしローンの支払いが困難になれば、担保となっている土地を売却し、それを元手にローンを返済することになる。しかし、借り入れた額が担保資産の売却額よりも大きければ、依然として債務者…

日本における金融機関の破綻処理について

日本における金融機関の破綻処理について。 金融機関の破綻で生じた損失を誰が負担するのか 破綻処理について考える上での前提として、金融機関が破綻に至る中で生じた損失をだれが負担するのか、という問題がある。金融機関の破綻に際して預金が全額保護さ…

シリコンバレー銀行はなぜ破綻したのか

本ページでは、アメリカのシリコンバレー銀行が破綻した理由についてまとめたい。現時点で分かっていることを文末の情報ソースなどからまとめている。 カリフォルニア州に本拠地を置くシリコンバレー銀行は、ベンチャー企業(とりわけテック系)を主要顧客とし…

金融機関のリスクガバナンスについて

本ページでは、金融機関におけるリスクガバナンスについてまとめたい。以下は組織の中の各パートにおける一般的な役割について記述している。(各社によって当然異なる。) 取締役会 まず、取締役会が、金融機関におけるリスクマネジメントの基本的な方針を…

抵当権とは何か?

「抵当権」という言葉が住宅ローンにおいてしばしば聞かれるが、どのような権利のことを指すのだろうか。 そもそも、住宅ローンを金融機関と契約するとき、金融機関は、ローンの借り手が購入する住宅を担保に取る。 もし借り手によるローンの返済が滞ってし…

ストレステストとは何か

金融の分野における「ストレステスト」は、様々な目的・手法・範囲を含んでおり、一概に画一的な説明が困難である。さらに、民間の金融機関が行うのか、中央銀行などの当局が行うのかによっても大きく内容は異なってくる。 しかし、あえて強引に一般化すれば…

LGD(デフォルト時損失率)とは何か

本ページでは、デフォルト時損失率 (LGD: Loss Given Default)についてまとめたい。LGDは、信用リスク推定のために使用する指標である。 信用リスクとLGD まず、銀行による貸出について考えてみる。銀行の場合は、企業や個人を信用した結果、お金を貸すので…

カウンターパーティリスクの削減方法について

本ページでは、カウンターパーティリスクの管理において、リスクをどのように削減したらよいか、その代表的な手法についてまとめたい。 カウンターパーティリスクとは 店頭デリバティブで取り扱うスワップ取引においては、取引相手が契約通りに支払いを行う…

金融における「エンティティ」とは?

金融において、たまに「エンティティ」という言葉を耳にすることがあるが、この「エンティティ」とは何を意味するのか。 英語辞書で「entity」を調べてみると、「1. 実在、存在 2. a 実在物、実体、本体 b. 自主独立体」とある(新英和中辞典)が、正直これで…

グローバルな金融グループのビジネスモデルとは?

世界にはグローバルに活動する大規模な金融機関が存在する。例えば、ゴールドマンサックス、JPモルガン、BNPパリバなどが挙げられるだろう。こうした金融グループは、どのようなビジネスを通じて収益をあげているのだろうか。以下、その全体像をまとめたい。…

「ルックスルー」とは何か

本ページでは、ファンドにおける「ルックスルー」とは何かについてまとめたい。 ファンドは、投資家から資金を募り、さまざまな資産に投資する金融商品である。例えば日経225に含まれる銘柄に投資するファンドなどがイメージしやすいだろう。 「ルックスルー…

オペレーショナルレジリエンスとは何か

本ページでは、オペレーショナルレジリエンスとは何かについてまとめたい。バーゼル銀行監督委員会は、2021年3月、「オペレーショナル・レジリエンスのための諸原則」を公表した。これは、銀行に対してオペレーショナルレジリエンスの確保のために求める原…

誤方向リスク(Wrong Way Risk)とは何か

本ページでは、誤方向リスク(Wrong Way Risk)とは何かについてまとめたい。誤方向リスクとは、一言でいえば、デリバティブ取引において、エクスポージャーの増大に伴って取引相手の信用力が悪化し(デフォルト確率の増大)、想定される損失が大きくなること…

信用創造とは何か?–信用創造とシステミックリスクの関係–

本ページでは、信用創造とは何かについてまとめたい。信用創造とは、一言でいえば、「銀行が預金を何倍にも膨らますことができる仕組み」である。 信用創造のしくみ 銀行は、預金者から集めた資金を、一部中央銀行への準備金を除いて基本的には貸出に回す。 …

信用リスク削減手法とは何か

本ページでは、バーゼル規制における信用リスク削減手法とは何か、その概要についてまとめたい。詳細は金融庁の告示文書や、以下に示す参考文献等を参考にされたい。 一言でいえば、自己資本比率規制における信用リスクアセット額の算出に当たり、担保等があ…

銀行代理業の銀行法上の取り扱いについて

本ページでは、銀行代理業の銀行法上の取り扱いについて整理する 。 まず、銀行法二条十四項において、銀行代理業は以下の通りに定義されている。 この法律において「銀行代理業」とは、銀行のために次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。一 預金又は…

銀行が営むことのできる業務の範囲とは?

本ページでは、銀行が営むことのできる業務の範囲を、銀行法を引用する形で整理したい。(本ページはほぼ銀行法の引用。) まず、銀行業としての固有の業務は、預金・貸出・為替のみである 。銀行法十条一項に記載がある。 第十条 銀行は、次に掲げる業務を…

金融リスク管理における「三つの防衛線」とは何か

金融機関におけるリスク管理について、「三つの防衛線」という言葉がある。金融機関における内部統制の在り方を示したものであり、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)での文書でも明文化されているが、この「三つの防衛線」の考え方についてまとめたい。 金融機関…

日本でバブル崩壊から金融危機まで数年のタイムラグが生じた理由について考察してみる

1980年代後半、日本では「バブル景気」と呼ばれる好景気が起こり、資産価格や株価が上昇、1989年から92年まで日本は国際経営開発研究所(IMD)の発表する国際競争力ランキングで世界1位だった。この頃日本経済はまさに絶頂期にあった。しかしこの好景気は長…

IRRBBとは何か

本ページでは、IRRBB(Interest Rate Risk in the Banking Book)とは何かについて、概要をまとめたい。一言でいえば、「銀行勘定の金利リスク」ということになる。バーゼルⅢでは、この銀行勘定の金利リスクに関する規制を定めている。 銀行勘定の金利リスクと…

市場リスクにおけるVaRの計測方法について

本ページでは、市場リスクにおけるVaRの計測方法についてまとめたい。 VaRとは、一言でいえば、将来起こり得る最大損失額の推計値のことである。 VaRについての基本的な説明は、以下のページを参照されたい。 hongoh.hatenablog.com ①分散共分散法 リスクフ…

信用リスクにおけるVaRの計測方法について

本ページでは、信用リスクにおけるVaRの計測方法についてまとめたい。 VaRとは、一言でいえば、「過去のデータをもとに、ある一定の確率の範囲内で、将来のある一定期間のうちに起こり得る最大損失額の推計値」ということができる。今回は、信用リスクの顕在…

信用リスクの計測方法について

本ページでは、信用リスクの計測方法の基本的な考え方についてまとめたい。 「そもそも信用リスクとは何か」については、以下のページを参照されたい。 hongoh.hatenablog.com 信用リスクの定量化 銀行は、たくさんの企業に貸出(信用供与)することで収益を得…