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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ESGとパフォーマンスの関係

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ESG投資は高いパフォーマンスを生むのだろうか。ESG投資とパフォーマンスの関係についてたくさんの実証論文が出されているが、未だに確たるコンセンサスはない状況である。

 

近年、「ESG」の名前を冠するファンドの組成が増えているが、「ESG」であることがパフォーマンスの向上に必ずしも寄与しないとすると、そのファンドの目的とはいったい何なのだろうか。投資信託は投資家にパフォーマンスを提供することが唯一にして絶対の存在理由ではなく、「投資を通じた社会貢献」も目的の一つということなのだろうか。

 

ESGとパフォーマンスの関係について、環境に優しい商品・サービスは今後需要が伸びていくだろうから、ESGに力を入れている企業に投資することで大きなリターンをあげられるかもしれない、という考え方がある。

 

一方、金融の教科書に必ず書いてある「平均・分散アプローチ」は、市場に出回る全ての銘柄を分散させて買うことが最も効率的であると主張する。この観点からみれば、「ESG」という、必ずしも企業の業績と関係するかわからない要素によって取捨選別をすることは、効率性を阻害し、パフォーマンスを押し下げるのではないか、という考え方もあり得る。

 

後者の立場をとったのが、トランプ政権自体の米国の労働省だ。労働省は2020年、企業年金における運用者やアセットオーナーに対する規制であるERISA法において、受託者はあくまで受益者のために金銭的なリターンのみを追求するべきだ、という旨を明記した改正案を提案し、大きな議論を巻き起こした。

 

一方、日本においてはGPIFが2017年より株式や債券など全ての資産でESGの要素を考慮して投資することを表明した。基本的には、年金基金などアセットオーナーは、ESGとパフォーマンスとの関係がどのようであるかに関わらず、責任ある投資家としてESG投資を考量せざるを得ない流れができているように思われる。