本ページでは、ARCH(autoregressive conditional heteroscedasticity model)モデルの概要についてまとめたい。
本ページで登場する自己相関や定常性、ホワイトノイズといった概念など、時系列分析の基本的な事項については以下の2つのページを参照されたい。
時系列データにおけるボラティリティ
時系列データ(株価など)を観察すると、ある時期にはボラティリティ(変動の大きさ)が大きい傾向が続き、またある時期にはボラティリティが小さい傾向が続くことがある。つまり、ある期のボラティリティが前期のボラティリティと相関を持っている可能性があるということである。ARCHモデルは、このボラティリティの自己相関をモデルに組み込んだものとなっている。
ARCHモデル
ある時系列データyについて、以下のようなARCH(m)モデルを考える。
μは条件付き期待値であり、ARMAモデル等を使って表現することができる。εは平均からの乖離であると解釈することができる。vはホワイトノイズであり、分散1、平均0の確率変数である。hは条件付き分散であり、前期までのεの2乗によって決定される。つまり、εが前期までのεに依存していることが分かる。また、αの値が大きいほど、より前期までのεに強く影響を受ける。
GARCHモデル
ARCHモデルを拡張したGARCH(r,m)モデルは以下のように表すことができる。
GARCHモデルでは、今期のhは前期までのεだけでなく、前期までのhに依存していると仮定している。ARCHの場合、ラグ次数(m)を大きくしなければならない傾向にあるが、GARCHの場合は次数が低くても(例えばr=1,m=1)長期的なボラティリティの自己相関の存在を表現できるとされている。
Lagrange multiplier test
ARCH効果が存在するかどうかを確認する方法にLagrange multiplier testがある。まず、考えられる回帰モデル(ARMAなど)を回し、誤差項の推定値の2乗を算出する。次に、この誤差の2乗について、以下の回帰を行う。
m期前までの誤差項の2乗で回帰している。もしARCH効果が存在しなければ、上記の回帰式の係数(α)はすべて0になるはずである。このことを帰無仮説として仮説検定を行う。サンプル数をT、決定係数をR^2とすると、TR^2は自由度qのχ2乗分布に収束することが知られている。TR^2が十分に大きければ、帰無仮説は棄却され、ARCH効果が存在することになる。
(参考):
Enders, Walter. (2015) ."Applied EconometricTime Series, 4th edition". Wiley Publishing.
ARCH効果に関する検定: