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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

資産運用ビジネスにおける利益相反について

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本ページでは、資産運用ビジネスにおいて発生する可能性のある利益相反の類型についてまとめたい。なお、以下に示す類型は金融庁が審議会にて示したものに基づいている。 

 

基本的にどの利益相反の類型も、顧客利益よりも自社の利益、あるいは会社が属する金融グループ全体の収益を優先する、という構造となっている。

 

①販売会社が商品提供会社から手数料を受け取るケース

投資信託などの金融商品を販売する販売会社は通常、商品提供会社(つまり資産運用会社)から手数料を受け取っている。「商品を売ってあげる対価」ということだ。その手数料は、投資信託ごとに別々に定められている。

 

そうすると、販売会社にとっては、資産運用会社からもらえる手数料が高い投資信託を顧客にたくさん売るインセンティブが生じる。本当は、顧客にとっては別の投資信託が最適だったとしても、販売会社の利益を優先して商品を売ってしまうと、それは利益相反となる。

 

投資信託の販売・運用が同一グループで行われているケース

「〇〇フィナンシャルグループ」といった同じ金融グループの中に、販売会社と運用会社が属する場合。顧客利益よりもグループ収益を優先して、同じグループの運用会社が作る投資信託を優先して販売会社が売る可能性がある。あるいは反対に、顧客の利益に関わらず、販売会社が売りやすい商品を運用会社が優先して組成することも考えられる。これらも、グループの収益を顧客利益よりも優先している点で利益相反であるといえる。

 

③法人営業を行う親会社等と運用会社が同一グループに存在するケース

資産運用会社は当然たくさんの株を保有しており、議決権を有する。適切に議決権を行使し、経営を改善させることを通じて企業の業績が上がれば、それはリターンとして資産運用会社にお金を預ける顧客に還元される。

 

しかし、もしその資産運用会社の系列に、議決権を保有する企業と親密な関係を持つ親会社(例えば銀行)などが存在する場合、資産運用会社は顧客の利益を優先する代わりに、親会社に配慮した議決権の行使(要するに手加減するということ)を行うかもしれない。これも、グループ収益を顧客利益より優先する利益相反の例と言える。

 

金融グループという形式の他にも、同じ会社内の別部門という形で同じ構図が存在し得る(典型的には法人営業部門と資産運用部門を有する信託銀行など)。

 

 

(出典)

金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第8回)議事次第:金融庁