金融機関破綻の原因について考えてみる
本ページでは、金融機関がどのような原因で破綻するのかについて考えたい。とりわけ、90年代の日本における金融危機について着目してみる。
ここでは、預金保険機構の『預金保険研究』(2005年)にある「金融機関破綻に関する定量分析」の分析結果を読み解いてみる。この分析は、預金保険機構が平成3年から13年までに資金援助をした180の破綻金融機関の事例(ここでは、証券会社は含まれていないことに注意されたい。)について、その根本的な破綻原因を区分し、傾向を探ったものである。
破綻原因の区分は、図表1のようになっている。まず破綻金融機関を債務超過か資産超過に大別、債務超過をさらに資産毀損によるものと資産毀損を経ずに大幅損失を被ったものに区別した。資産毀損の原因として①貸出債権の不良化、②有価証券等の失敗をあげ、資産毀損のない大幅損失の原因として③不正や不祥事の事件をあげた。①は、さらにA.不動産関連業種への与信集中を原因とするものB.不動産以外の業種の与信集中によるものC.景気低迷を原因とするものに細分化される。また、この分析においては、資産超過ながらも資金繰り悪化によって破綻した金融機関の事例はなかった。
預金保険機構(2005)「金融機関破綻に関する定量分析」より
分析結果は、①が91.7%、②が27.8%、③が5.0%であった(重複もあるので合計が100%ではない)。さらに①A.が46.1%、①B.が26.1%、①C.が27.2%である。
また、破綻原因を時系列で見ると、図表2のような推移が得られる。次に、①の内訳がどのように推移していったかをグラフに表すと、図表3のようになった。
預金保険機構(2005)「金融機関破綻に関する定量分析」より
預金保険機構(2005)「金融機関破綻に関する定量分析」より
以上の分析から示唆されることは、バブル崩壊以後10年余りにおける破綻金融機関の大半には不良債権問題が関わっていたこと、そして金融危機が起こった1997年(平成8年)ではその傾向が顕著であり、さらに不動産関連業種への与信集中が主たる原因であるということである。ゆえに、金融危機の根源的な要因は、バブル崩壊後に増大した不良債権問題にあると考えることができる。
(参考):