本ページでは、バーゼルⅢにおけるリスクアセット算出方法の全体像についてまとめたい。具体的な算出方法の詳細は本ページでは立ち入らないので、金融庁の告示文書や各種参考文献等を参照されたい。
バーゼル規制においては金融機関の健全性確保のために、リスク性資産に対して一定程度の自己資本の確保を求めている。これが自己資本比率規制である。リスクの種類には大きく分けて信用リスク、マーケットリスク、オペレーショナルリスクがある。
そして、基本的に、各種リスクの算出方法は標準的手法と内部モデル手法に分かれる。後者は、銀行独自のモデルにより算出する方法で、使用するには金融庁長官の承認が必要となる。
①信用リスク
信用リスクは、与信先のデフォルト等により資金回収ができないリスク、デリバティブ取引における相手方の支払い不能により得られたはずの収益が得られないリスク(カウンターパーティリスク)などである。
○与信
標準的手法
信用リスクが存在する取引の額を計算し、各種取引において信用リスクの高さに応じて決定される「リスクウェイト」を乗じたうえで、リスクアセットとして算入する。
内部格付手法(IRB)
定められた数式に、各銀行が独自に推計した変数を入力することで信用リスクアセットを算出する。
○デリバティブ取引
SAC-CCR
Standardised Approach for measuring Counterparty Credit Risk Exposures の略語で、日本語では「カウンターパーティ信用リスクの計測に係る標準的手法」となる。
期待エクスポージャー方式(IMM)
デリバティブ取引における与信相当額を銀行の内部モデルを使用して算出する方法。
②マーケットリスク
標準的手法
金利リスク、株式リスク、外国為替リスクといったリスクカテゴリーに分かれており、それぞれのポジション額に一定の数字を乗じた値をリスクアセットとして算入する。
内部モデル方式(IMA)
銀行内部のモデルを使用してマーケットリスクを算出する。
※「内部モデル」に関しては、それぞれのリスクについて微妙に名前、略称が異なるので注意(IRB、IMM、IMA)。
③オペレーショナルリスク
新しい標準的手法
今までオペレーショナルリスクには複数の算出方法が存在したが、バーゼルⅢの適用によりこれらは廃止となり、「新しい標準的手法」が導入された。
金利・配当の額、サービス、金融取引、の3つについて、その規模と過去の損失実績を踏まえた乗数(ILM)を掛け合わせることでオペレーショナルリスクを算出する。
(参考):
吉井 一洋、 金本 悠希、 小林 章子、 藤野 大輝(2019)『詳説 バーゼル規制の実務―バーゼルIII最終化で変わる金融規制 』