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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

バーゼルⅢにおける自己資本比率規制の概要

本ページでは、バーゼルⅢにおける自己資本比率規制の概要についてまとめたい。

 

自己資本比率規制の概要

自己資本比率規制では、国際的に業務を行っている銀行(国際統一基準行)に対して以下を満たすことを「所要最低水準」として求めている。

 

自己資本比率
(普通株式等Tier1資本+その他Tier1資本+Tier2資本)/(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク)≧8%

 

Tier1比率=
(普通株式等Tier1資本+その他Tier1資本)/(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク)≧6%

 

普通株式等Tier1比率=
普通株式等Tier1資本/(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク)≧4.5%

 

自己資本(バランスシートの右側にある)の役割は、バランスシー トの左側にある貸し出しや保有有価証券などの資産が毀損した場合 、その損失を吸収する働きをもつ。


Tier1資本は事業を継続しながらの損失吸収が可能で、Tier2は銀行破綻時に損失を吸収することが想定されている。

それぞれのタイプの資本の具体例は以下の通りである。

普通株式等Tier1資本:普通株式内部留保
その他Tier1資本:優先株式、優先出資証券
Tier2資本:劣後債、劣後ローン、一般貸倒引当金

 

追加的なバッファー

バーゼルⅢでは、以下のように、最低所要水準に加えて追加的なバッファーを求めている。

資本保全バッファー

普通株式等Tier1資本に2.5%の上乗せを求めている。(つまり、最低所要水準と合わせて7%が求められる)

もし資本保全バッファーが毀損されると(最低所要水準と合わせて 7%の水準を下回り、例えば6%となった場合)、その程度に応じて、配当や役職員への賞与等、資金の社外流出が制限される。

カウンター・シクリカル・バッファー

信用創造の過熱を防ぐために設けられるバッファー。国によって普通株式等Tier1資本に0~2.5%の範囲で設定される。

カウンター・シクリカルバッファーの考え方については以下を参照 。

hongoh.hatenablog.com

もしこのバッファーが毀損されると、資本保全バッファーと同様、その程度に応じて、配当や役職員への賞与等、資金の社外流出が制限される。

 

G-SIBsバッファー

G-SIBsとは、国際統一基準行の中でも、グローバルに活動し、金融システムへの影響が大きい銀行として指定された銀行である(例えば、ゴールドマンサックスやJPモルガンなどが該当)。指定された銀行ごとに、普通株式等Tier1資本1.0~3.5%の上乗せを求めている。

G-SIBsバッファーについても、既存の程度に応じて、配当や役職員への賞与等、資金の社外流出が制限される。


以上をまとめると、自己資本比率規制は以下のように整理される。




(参考):

吉井一洋、金本悠希、小林章子、藤野大輝(2019)『詳説 バーゼル規制の実務 バーゼルⅢ最終化で変わる金融規制』