バーゼルⅢの全体像について
本ページでは、バーゼルⅢの全体像についてまとめたい。
バーゼル規制の「3本の柱」
バーゼル規制では、銀行の健全性確保のための規制として、次の3本の柱を掲げている。
第1の柱:資本賦課
自己資本比率規制。バーゼル規制の最もポピュラーな規制といって良いだろう。銀行が取っているリスクに対して、一定の自己資本の確保を求めるものである。
第2の柱:監督上の取扱い
銀行が自らのリスクを自己管理することを促し、監督当局に対しては、各金融機関のそれぞれのリスク管理戦略について検証・評価を行い、必要に応じて監督上の措置を求めるというものである。
第3の柱:開示
自己資本比率や銀行が抱えるリスク、そしてその管理状況などについての開示を通じて、個々の金融機関のリスク管理を促すものである。
バーゼルⅢの概要
2008年の世界的な金融危機を踏まえ、2010年に「バーゼルⅢ」が国際的に合意され、2013年以降各国で適用が始まった。その概要は以下の通りである(以下金融庁資料の抜粋)。
(1)自己資本比率規制
・リスク捕捉の強化
カウンターパーティー・リスクの資本 賦課計測方法の見直し
・資本の質の向上
①普通株等Tier1に調整項目を適用
②Tier1、Tier2適格要件の厳格化
・資本水準の引き上げ
普通株等Tier1比率、Tier1比率の 最低水準を引き上げ
(2)流動性規制
①流動性カバレッジ比率(ストレス時の預金流出等への対応力を強化)
②安定調達比率(長期の運用資産に対応する長期・安定的な調達手
(3)自己資本比率規制の補完となる規制
・エクスポージャー積み上がりの抑制
レバレッジ比率の規定(レバレッジ比率規制=自己資本/ノン・リスクベースのエクスポージャー)
・システム上重要な銀行への追加措置
システム上重要な金融機関によってもたらされる外部性を減少させ
・プロシクリカリティの緩和
資本流出抑制策(資本バッファー<最低比率を上回る部分>の目標水準に達するまで配当・ 自社株買い・役員報酬等を抑制)など
バーゼルⅢ最終化の概要
その後、2017年に以下の見直しに関して国際合意がなされ、バーゼルⅢは最終化された。概要は以下の通りである(以下金融庁資料の抜粋)
(1)信用リスクの標準的手法の見直し
・ 中堅・中小企業向け債権(無格付)のリスクウェ イト(RW)を引下げ(100%⇒85%)
・株式のRWを段階的に引上げ(100%⇒250%)
(2)信用リスクの内部モデル手法の見直し
・各銀行による内部モデルの利用範囲を制約
・デフォルト確率等の自行推計値に下限を設定
(3) マーケットリスクの計測手法の見直し
・標準的手法はリスク感応的となるよう再設計
・内部モデル手法は承認要件見直し等の抜本見直し
(4)CVA(信用評価調整)リスクの計測手法の見直し
・会計やリスク管理実務を踏まえた枠組みへ 見直し
・規模・特性等を踏まえた計測手法を用意
(5)オペレーショナルリスクの計測手法の見直し
・内部モデル手法を廃止し、新標準的手法へ一本化
・銀行のビジネス規模と損失実績を勘案
(6)資本フロアの導入
・内部モデルにより算出したリスクアセット(RWA)額は、標準的
RWA額の72.5%を下限とする(段階的引
(7)レバレッジ比率の見直し
・分母(デリバティブ取引等)の算出方法を見直し
・最低水準(3%)について、G-SIBsには一定の上乗せ(邦銀の場合、0.5%~0.75%)
(出典):
自己資本比率規制(第1の柱・第3の柱)における信用リスク、CVAリスク及びマーケット・リスクに係る告示の一部改正(案)等の公表について:金融庁