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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

金融ビッグバンとは何か

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本ページでは、1990年代後半に日本で実施された金融制度改革である「金融ビックバン」の概要についてまとめたい。

 

「金融ビッグバン」の背景

日本の金融システムは伝統的に、間接金融つまり銀行が主体であったということができるだろう。 
 
日本の高度経済成長時は、継続した人口増加に伴う労働投入量の増加、多額の設備投資による資本投入量の増加が、企業の成長の鍵であった。このようなフェーズにおいては、銀行を中心とした金融システムが効果的に機能した。


将来の成長の見込みがある企業に対して銀行が融資をし、企業はそれを受けて設備投資や人員の増加を実施し、着実に事業規模を増加させていく。 銀行は過度なリスクテイクに陥ることなく、 着実に収益をあげることができる。
 
しかしながら、経済が成熟し、成長率がフラットになり、 人口減少が続く昨今においては、資本蓄積や労働投入を増やしていくのは容易ではない。 こうした段階において、経済成長の重要な要素となるのは技術進歩、さらに言えばイノベーションである。


そのため、 イノベーションを起こす企業にお金が集まる環境が整備されること が重要であるが、銀行がこの担い手になるのはハードルが高い。 銀行からの借入金は、基本的には将来必ず返さなければならない。ただし、企業が将来確実に顕著な技術革新を達成できるかどうかは不透明であり、どの企業が技術革新を成し遂げられるかを予測するのは難しい。


このように、「将来うまくいけば大成功となるけれども、うまくいかない場合もある」といった企業に貸し出しを行うの銀行にとってはリスクである。こうしたいわゆる「リスクマネー」の供給の担い手は、銀行ではなくマーケットを通じて株式等に投資する投資家である。


成熟した経済において経済成長を実現させるには、 イノベーションが不可欠であり、そのためには市場を通じて投資家が直接投資先を決定する「直接金融」の仕組みの方が適している。

 

預金に眠る一千〜二千兆円にものぼる家計金融資産の一部を、この「直接金融」のフィールドにもっていくことで、次世代を担う成長産業へ供給していくことが重要と考えられた。


 「金融ビックバン」とは、このような観点から、"フリー"すなわち市場原理が働く自由な市場、"フェア"すなわち透明で信頼できる市場、"グローバル"すなわち国際的で時代を先取りする市場の3原則を掲げ、抜本的な金融市場の改革を目指したものである。

 

以上は資金調達を行う企業サイドの論理が中心であったが、金融サービスを利用する利用者の側からみれば、自由化が進むことでより幅広い金融商品が様々な主体によって提供されることが期待された。

 

一連の制度改革

「金融ビッグバン」構想に基づき、一連の制度改革が実行された。具体的には、以下のような事項が、98年の金融システム改革法のもと制度化された。

 

投資家・資金調達者の選択肢の拡大

投資信託の商品多様化
・「証券総合口座」の導入
・証券デリバティブの全面解禁
資産担保証券など債券等の流動化
外国為替法の改正
・銀行等による投資信託の窓口販売の解禁

 

仲介者サービスの質の向上及び競争の促進

・証券会社の業務多角化
・ラップ口座の解禁
・株式媒介委託手数料の自由化
・証券会社の免許制から原則登録制への移行
・証券子会社・信託銀行子会社の業務範囲の制限撤廃
・保険会社と金融他業態との間の参入

 


利用しやすい市場の整備

・取引所集中義務の撤廃
・店頭登録市場における流通面の改善
・未上場・未登録株式市場の整備
・私設取引システム(PTS)の導入

 

信頼できる公正・透明な取引の枠組み・ルールの整備

・連結財務諸表制度の整備
証券取引法の公正取引ルールの整備拡充等
・投資者保護基金及び保険契約者保護機構の設立

 

 

(参考):

大蔵省/日本版ビッグバンとは