本ページでは、ブロックオファーとは何かについてまとめたい。ブロックオファーとは、一言でいえば、上場企業の大株主等が保有している株を売却する際に、証券会社が市場の外で株式を買い取り、市場の外で投資家に売却する取引である。
マーケットインパクトの回避
株式を大量に売ると、マーケットにおいて需要と供給のバランスが変化し、供給過多になるため、価格が低下する。この傾向は、出来高が少ない(取引量が少ない)銘柄においてより顕著である。売り手にとっては、売却前の価格よりも低い価格で約定することになってしまう。これを「マーケットインパクト」という。
ブロックオファーは、証券会社が大量の株を市場の外で引き取ることにより、マーケットインパクトの発生を回避するものとなっている。
取引の概要
証券会社が、株主からいくらで買い取るか、そして投資家へいくらで売却するかを決定する。売却先の投資家は証券会社が募る。一般的に、取引を持ち掛けられた日の終値を基にそれぞれの価格を算定することが多い。当然、株主で買い取る額よりも、投資家に売る値段の方が高く設定されており、その差額(スプレッド)は証券会社の利益となる。一連の流れは、全て市場の外で行われる。
それぞれのプレーヤーにとってのメリット
ブロックオファーを行うことによるそれぞれのプレーヤーのメリットは以下のように整理できる。
大株主
上記のように、売却時にマーケットインパクトコストを防ぐことができるので、より高値での売却が期待できる。ブロックオファーにより、市場で売却した時に予想される価格(マーケットインパクトにより直前の市場価格の終値よりも低くなる)よりも高い値段で売ることができれば、株主にとっては得をしたということになる。
ブロックオファーにおける売却価格があまりにも下がってしまうと、株主にとって好条件ではないと判断されるため、取引は成立しない。2021年、SMBC日興証券がブロックオファーの成立のため該当銘柄を買い支えしていた(いわゆる相場操縦)疑いがあり、証券取引等監視委員会による強制捜査が行われた。そして、2022年3月、SMBC日興証券の幹部が金商法違反の疑いで逮捕された。
投資家
投資家にとっては、市場価格よりも低い値段で銘柄を購入できるというメリットがある。投資家は市場でそれを売却すれば、利益を得ることができる。
証券会社
大株主と投資家の仲介役となる証券会社は、ブロックオファー取引を通じてスプレッドを得ることができる。
(参考):
市場の公正揺るがす SMBC日興社員、相場操縦疑い: 日本経済新聞