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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

CFC税制(タックスヘイブン対策税制)とは何か

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CFC(Controlled Foreign Company)税制とは、外国子会社等を利用した租税回避を防止するために、一定の条件を満たす外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなし、日本で課税する制度である。タックスヘイブン対策税制又は外国子会社合算税制ともいう。

 

租税回避の例

日本における税率が30%、A国の税率が10%だったとする。200の所得を稼ぐ日本企業Xが、日本のみで課税される場合、60が徴収額となる。

 

しかし、A国に実態のないペーパーカンパニーである外国子会社を設立し、200の所得の半分を外国子会社によるものとしたとき、100×0.3+100×0.1=40が徴収額となる。すると、上記の場合と比べて、20だけ租税を回避したことになる。

 

CFC税制の概要

CFC税制は、このような租税回避行為を防ぐための制度である。具体的には、外国子会社の税負担が少ないと認められる場合、外国子会社の所得を日本本社の所得と合算し、日本の税率で課税するというものである。

 

ただし、外国で既に課税された分は、日本の課税額からは控除する。そのため、CFC税制適用後は、X社の租税額は外国では100×0.1=10、日本では(100+100)×0.3-10=50となり、合計60となる。

 

それでは、外国子会社の税負担がどれほど小さければ、このCFC税制が適用されるのだろうか。この判定には、外国子会社における租税負担割合が用いられ、租税負担割合20%未満が一つの基準となる。租税負担割合は、「租税額/所得」で計算される。外国子会社の所得に比して税負担があまりに軽い時、租税回避が行われるのではないか、ということだ。

 

ケース①租税負担割合20%未満の場合

租税負担割合が20%未満であることに加え、以下に示す「経済活動基準」のいずれかを満たさない場合、外国子会社の所得を日本本社の所得と合算し、日本の税率で課税する(合算課税)こととなる。租税負担が低いかつ実質的な経済活動を行っていない場合は、租税回避のための外国子会社なのではないか、という考え方である。

 

経済活動基準

1.事業基準

  • 主たる事業が株式保有(統括業務除く)、特許権等の提供、船舶・航空機の貸付けのいずれにも該当しないこと

2.実体基準

  • 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること

3.管理支配基準

  • 本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること

4.所在国基準、非関連者基準

  • 製造業等の場合、主として所在地国で事業を行っていること
  • 卸売業等8業種(※)の場合、 主として関連者以外の者と取引を行っていること

※ 卸売、銀行、信託、金融商品取引、保険、水運、航空運送、航空機賃貸

 

逆にこの経済活動基準をすべて満たす場合、租税負担割合が20%未満であったとしても、合算課税は適用されない

 

ケース②20%以上30%未満の場合

20%以上の場合でも、合算課税が適用される場合がある。

特定外国関係会社」に該当し、かつ税負担割合が30%未満の場合、会社単位の合算課税の対象となる。「特定外国関係会社」とは、ペーパーカンパニー・受動的所得が一定割合を超える会社(キャッシュボックス)などが該当する。

 

 

繰り返しになるが、租税負担が小さく、実質的な経済活動を行っていない外国子会社は、「租税回避」をしているとみなす、というのがCFC税制の基本的考え方である。

 

CFC税制は複雑であるため、詳細については以下を参照されたい。

 

(出典)

経済産業省(2017)『CFC税制の改正について(タックスヘイブン対策税制・外国子会社合算税制