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法人税はなぜ課される?法人税の課税根拠について

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本ページでは、法人税の課税根拠についてまとめたい。

 

応益説

まず法人税の課税根拠として挙げられるのは「応益説」である。これは、法人が政府から提供を受けた便益に対する対価として法人税を支払う必要がある、というものである。会社が経営を営むにあたり、様々なインフラが整っていたり、法律がきちんと整備されている必要がある。さらに、会社が雇う従業員の教育は、その全てが会社によって行える訳ではなく、基礎的な部分について公教育に依存している面もある。そうした、直接的、間接的に政府から享受している便益こそが、法人が法人税を払う根拠であるという考え方である。

 

個人所得税の前払いとしての法人税

法人税は個人所得税の前払いとして機能するという考え方もある。個人の所得には給与所得以外にも、株式を保有していることによる配当や、株式を売却することにより得られるキャピタルゲインもある。

 

企業が利益を配当として株主に支払う場合、個人である株主はその配当に対して所得税を支払う義務を負う。しかし、企業が利益を内部留保として貯めておいた場合、株主が株を売却し、キャピタルゲインを実現させない限り、個人に対しては所得税が発生しない。なぜなら、実現していないキャピタルゲイン(いわゆる「含み益」)の状態で課税するのは困難であるためである。

 

株式の保有により実質的に生じた「所得」について、その所得が実現しているか否かで課税の取扱いが変わってしまうことを防ぐため、法人段階での課税、すなわち法人税が必要である、という考え方がある。

 

しかし、「法人税は個人所得税の前払い」という観点に立った際に注意する必要があるのは、法人段階で法人税が課され、その後株主に支払われた配当に対して所得税が課されると、それは二重課税になってしまうという点である。

 

日本では、個人が受け取った配当の一定割合を、所得税額から差し引くことができるという「配当控除」によって、二重課税が調整されている。

 

外国の一部で導入されている二重課税方法として「インピュテーション方式」というものがある。これは、法人課税前の配当に対して所得税率をかけて所得税額を計算し、その後(前取りした)法人税額を所得税額から差し引くことで、二重課税を防ぐというものである。

 

 

 

 

(参考)

持田信樹(2009)『財政学』東京大学出版会