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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ダイベストメントの問題点について

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「ESG投資」には様々な手法があるが、そのうちの一つに「ダイベストメント」というものがある。ダイベストメントとは、ESGの概念に反するような企業(例えば化石燃料や、兵器を扱う企業など)の投資を止め、資金を引き上げることである。

 

投資家が「ESGに積極的に取り組んでいる企業に投資する」のに合わせて、「ESGに取り組んでいない企業には投資しない」ことで、社会全体としてESGが促進されるという考え方があり、ダイベストメントは後者を指す。「ネガティブスクリーニング」と言われることもある。

 

企業にとっては、投資家が資金を引き上げてしまうと株価が下がり、資金調達が難しくなり想定していた企業活動に支障をきたす可能性がある。よって、ダイベストメントを多くの投資家が実践することによって、企業がESGに取り組むインセンティブが生まれるという考え方がある。

 

しかしながら、ダイベストメントには考慮しなければならない点もある。

 

第一に、「業種によって機械的にスクリーニングされてしまわないか」、という点である。

 

例えば格付け機関等が企業に付与するESGスコアに基づいて投資決定を行う際、構造的にCO2を多く排出してしまう産業の企業は、たとえできる範囲でどれだけESGの取り組みを進めても、スコアが低くなってしまう可能性がある。反対に、あまりエネルギーを消費しないITや人材といった産業の企業は、大した努力をしなくてもスコアが高くなりうる。

 

そうすると、CO2を構造的に多く排出してしまう産業というだけで、ESGに積極的に取り組む企業を機械的に排除してしまう可能性がある。

 

第二に、「ESGに取り組まない企業を放置することに繋がらないか」、という点である。たとえESGに関心のある投資家が資金を引き上げても、誰かは株を保有する。その企業は、ESGにうるさい株主がいなくなったので、逆にやりたい放題できてしまう可能性もある

 

あえてこうした企業の株を保有し、議決権行使によってESGの取り組みを促す、という手法を取ることも十分に考えられる。「放置すること」がESG推進のうえで最適解とは限らない。

 

(参考)日本経済新聞『「投資撤退」は万能なのか(一目均衡)』(2018年11月5日)