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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ダブルギアリング規制とは何か

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本ページでは、ダブルギアリング規制とは何かについてまとめたい。

 

ダブルギアリング規制とは、銀行などの金融機関が、他の金融機関に出資することを規制するものである。金融機関どうしがお互いの資本を持ち合っている状況をダブルギアリングというが、この状況下では以下のような懸念がある。

 

①金融機関の自己資本比率のかさ上げ

金融機関、とりわけ銀行に対しては、金融システム安定のため、「バーゼル規制」という自己資本比率を一定に保つ規制が課せられている。自己資本とは、株主からの出資や、利益の内部留保など、誰かに返済する必要のない資本である。金融機関がお互いの株主となり、出資し合っている状況は、お互いの自己資本を増加させ、自己資本比率を実態よりも高める効果を持つ。

 

②金融機関の破綻の連鎖の可能性

こうした状況では、ある金融機関が経営破綻した場合、その金融機関の株式を保有していた別の金融機関の資産が棄損することとなるため、破綻の影響が他の金融機関にも波及する可能性がある。

 

以上のように、「金融機関間の株式の持ち合い」は、金融機関の経営破綻の影響を金融システム全体に波及させる恐れがある。これを防ぐために、バーゼル規制において、金融機関が連結外の金融機関に対して一定の出資をした場合、出資元の金融機関に対して、バーゼル規制において算入される自己資本からその出資額の全部または一部を控除する(差し引く)ことが求められる。これが「ダブルギアリング規制」の概要である。

(紛らわしいが、出資元の金融機関にとって、他金融機関への出資それ自体は自己資本ではなく「リスクアセット」に計上される。他金融機関への出資額の全部または一部と等しい金額を、自己資本から差し引くという意味である。)

 

より具体的には、自己資本のかさ上げを目的とした持ち合いの場合は、出資額全額を自己資本から控除することが求められ、それ以外については、自己資本総額の10%を超える他の金融機関への出資分について、出資元の金融機関の自己資本から控除することが必要となる。

 

この規制により、他の金融機関への出資が、バーゼル規制において認められる自己資本を減少させ自己資本比率を低下させてしまうことになるため、金融機関間の出資の抑制に繋がると考えられる。

 

ダブルギアリングに関するバーゼル規制は、国内では金融庁により「告示」という形で明文化されている。