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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

二重課税の種類について

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本ページでは、二重課税にはどのような種類があるのかについてまとめたい。

 

法人税所得税

法人税個人所得税の前払いとして機能するという考え方がある。個人の所得には給与所得以外にも、株式を保有していることによる配当や、株式を売却することにより得られるキャピタルゲインもある。

 

企業が利益を配当として株主に支払う場合、個人である株主はその配当に対して所得税を支払う義務を負う。しかし、企業が利益を内部留保として貯めておいた場合、株主が株を売却し、キャピタルゲインを実現させない限り、個人に対しては所得税が発生しない。なぜなら、実現していないキャピタルゲイン(いわゆる「含み益」)の状態で課税するのは困難であるためである。

 

株式の保有により実質的に生じた「所得」について、その所得が実現しているか否かで課税の取扱いが変わってしまうことを防ぐため、法人段階での課税、すなわち法人税が必要である、という考え方がある。

 

このとき注意する必要があるのは、法人段階で法人税が課され、その後株主に支払われた配当に対して所得税が課されると、それは二重課税になってしまうという点である。

 

日本では、個人が受け取った配当の一定割合を、所得税額から差し引くことができるという「配当控除」によって、二重課税が調整されている。

 

外国の一部で導入されている二重課税方法として「インピュテーション方式」というものがある。これは、法人課税前の配当に対して所得税率をかけて所得税額を計算し、その後(前取りした)法人税額を所得税額から差し引くことで、二重課税を防ぐというものである。

 

②外国での課税と国内の課税

まず、日本の法人税全世界所得課税主義の考え方をとっている。国内でビジネスをしても国外でビジネスをしても、同じ税率が日本で課されるというものである。


ただし、外国でビジネスを行う場合には外国の法人税が取られてしまうので、二重課税の発生が懸念される。そこで、外国の法人税額の分だけ税額控除する国税額控除が適用される。具体的には、海外支店という形態で外国においてビジネスを行う場合、内国の税と外国の税が両方かかるので、外税控除が適用される。

 

ただし、外国税額控除には限度があり、

国税額控除限度額

=全世界所得に対する日本の法人税額 

×国外所得金額/全世界所得金額

 

である。なお、控除しきれない外国税額(控除限度超過額)は、翌期以降3年間繰越すことができる。

 

一方、外国子会社として事業展開を行い、配当という形で国内の本社に還元するという形を取る場合、外国子会社は全世界所得課税主義のもとでは内国法人ではないので、課税対象外配当を繰り延べる(先延ばしする)ことで税を免れることができてしまう。これを防ぐのが、CFC税制である。

 

CFC税制

CFC(Controlled Foreign Company)税制とは、外国子会社等を利用した租税回避を防止するために、一定の条件を満たす外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなし、日本で課税する制度である。タックスヘイブン対策税制又は外国子会社合算税制ともいう。


日本における税率が30%、A国の税率が10%だったとする。200の所得を稼ぐ日本企業Xが、日本のみで課税される場合、60が徴収額となる。

 

しかし、A国に実態のないペーパーカンパニーである外国子会社を設立し、200の所得の半分を外国子会社によるものとしたとき、100×0.3+100×0.1=40が徴収額となる。すると、上記の場合と比べて、20だけ租税を回避したことになる。


CFC税制は、このような租税回避行為を防ぐための制度である。具体的には、外国子会社の税負担が少ないと認められる場合、外国子会社の所得を日本本社の所得と合算し、日本の税率で課税するというものである。

 

 

外国子会社配当益金不算入制度

これも、外国税額控除と同じく、二重課税を調整する制度となっている。漢字が多くて分かりづらいが、言葉を補って書き直すと「外国子会社(からの)配当(を国内本社の)益金(には)不参入(とする)」制度、といえる。法人税は益金−損金の額に対して課税を行う。外国子会社の配当を益金に参入しないということは、法人税課税の対象外とするということだ。

 

この制度がなければ、外国子会社に対してまず外国の税が課され、国内本社に配当として渡った際に国内の税が課されると、二重課税となってしまう。2009年に導入されたこの制度は、二重課税を防ぎ、外国で発生した収益を国内に還流させる狙いがある。

 

以上、①法人税所得税、②外国での課税と日本の課税、について概観したが、このほかにも個別間接税(たばこ税など)と消費税、といった二重課税も存在する。「二重課税」といったときに、どの文脈で話されているのかについて注意したいものである。