債券のデュレーションとは何か―割引債の場合
本ページでは、債券(ここでは割引債)のデュレーションとは何かについてまとめたい。
割引債と利付債
債券は割引債と利付債に大別される。額面金額から割り引かれた価格で発行され、期中は利子(クーポン)の支払いがなく、償還時に額面金額が支払われる債券である。利付債は、定期的にクーポンが支払われる債券である。
以下では、割引債のデュレーションについて記述したい。(利付債のデュレーションの考え方はやや複雑である。)
デュレーションの概要
デュレーションとは、「利回りが1%増加したときに債券価格が何%変化するか」を示す指標である。より堅い表現で言えば、「金利変動に対する債券価格の感応度」と言うことができる。
そして、割引債の場合、このデュレーションと、債券の残存年数(償還までの年数)は一致することが知られている。残存年数は言い換えれば、元本の回収まで要する期間と言うこともできる。以下では、割引債の具体的な数値例を基に、なぜ両者が一致するのか検証してみたい。
具体例
以下のような割引債があったとする。
額面:100円
残存年数:1年
債券価格:95円
95円投資して3年後に額面の100円が戻ってくるので、100/95≒5.2%・・・①
が最終利回り(年率)である。
ここで、利回りが6.2%になった(つまり1%上昇した)とき、債券価格はどれだけ変動するだろうか。
額面(1年後戻ってくる額)は100円で固定なので、
100/x ≒6.2%・・・②
のxが変動後の債券価格となる。
ここで、①と②式を見比べてみる。右辺が1%上昇しているから、左辺も1%上昇しなければならない。左辺が1%上昇するには、分子の100が固定なら、分母のxが①左辺の分母である95より1%小さくなければならない。
よって、デュレーションは1であり、すなわち「利回りが1%上昇したとき、債券価格は1%減少する」ということが分かる。
ここで、利回りは年率ベースであるから、年率利回り1%の上昇は、残存期間2年であれば最終利回り2%、3年であれば3%の上昇を意味する※。
(※厳密には年率利回りを残存期間で換算するときは年率利回りを累乗するので(例えば3年であれば年率利回りの3乗)、単純な正比例の関係にはないが、変動幅がそれほど大きく無い範囲においては両者は近似できると考えることができる。)
そうすると、結局、残存年数分だけ利回りを上げようとすると、同じ割合だけ債券価格を下げる必要が出てくる。
よって、割引債の場合、残存年数(元本回収までの期間)と、金利に対する債券価格の感応度は等しくなり、これらをデュレーションと呼んでいる(しばしばデュレーションには2つの側面があると説明される)。つまり、残存年数が長いほど、金利に対する価格の感応度は大きくなる。
クーポンを伴う利付債の場合はデュレーションの導出は少し複雑になる。
厳密な数式等については以下の文献等を参考にされたい。
(参考):
服部 孝洋(2020)「金利リスク入門
―デュレーション・DV01 (デルタ、BPV)を中心に―」財務総合政策研究所
根岸康夫(2006)「現代ポートフォリオ理論講義」