金融において、たまに「エンティティ」という言葉を耳にすることがあるが、この「エンティティ」とは何を意味するのか。
英語辞書で「entity」を調べてみると、「1. 実在、存在 2. a 実在物、実体、本体 b. 自主独立体」とある(新英和中辞典)が、正直これでは何を意味するのかは分からない。ただ、総じて、「一まとまりのもの」をエンティティというと理解すれば良いのだろう。
それでは、金融業界の文脈で「エンティティ」とはどのような意味なのか。エンティティの使用例としては、例えば2016年の金融庁の事務局説明資料がある。
親会社の金融機関との利益相反のみならず、日本国内では、信託銀行形態に典型的に見られるように、1つのエンティティ内に運用部門と法人事業部門の両方が併存しているという形での利益相反もあるのではないか。
これは、金融機関における利益相反についての議論において提出された資料の中の文言である。金融機関において発生し得る利益相反は様々なものがあるが、例えば運用機関と親会社の金融機関と間の利益相反以外にも、同一エンティティ内にも、運用部門と法人事業部門がは依存していることにより利益相反が存在し得るのではないか、というのがこの文の趣旨である。
そうすると、ここでの「エンティティ」の意味とは、金融グループ内のある一つの法人、と捉えるのが自然である。金融グループの中には銀行、証券、資産運用などの業態、そしてそれらを統括する持株会社が、それぞれ別会社として設立されている。その金融グループ内の一つ一つの会社を指して「エンティティ」と呼ぶことが多い。あるいは、グローバルに活動する金融機関の、日本支社、日本支店についても、「エンティティ」と呼ばれることがある。
いずれにしても、「ひとまとまりのもの」という意味合いがentityの本来のニュアンスであり、そのイメージから敷衍すると金融の文脈におけるエンティティも理解しやすいのではないか。金融以外にも、「エンティティ」は広くビジネスで使われる用語であり、同じようにして文脈に当てはめていけば良いだろう。