本ページでは、会社型ファンドと契約型ファンドにおけるガバナンスの違いについてまとめたい。
投資信託は大きく分けて「会社型投資信託」と「契約型投資信託」に分類される。前者は、資産運用会社が法人格を有する投資信託を設立し(投資法人)、この投資法人が発行する投資口座を投資家が購入するという形態をとる。後者は運用会社と信託銀行が信託契約を結び、運用会社が発行する受益証券に投資家が投資するという形態をとる。
契約型ファンド
日本においては、「契約型」が大半を占める。運用会社と信託銀行が契約を結び、運用会社がファンドの運用を指図、信託銀行が資金の管理を行う。
法的に、投資家(受益者)の財産を直接的に守る立場にあるのは運用会社ではなく信託銀行(受託者)ということになる。ただ、信託銀行はあくまで資産の管理を行っているのみなので、信託銀行に投資家保護の観点からどこまで役割を求めるべきなのかは不明確。
運用会社については、投資家に対して忠実義務と善管注意義務を定めている(金商法42条)が、その具体的な効力については不明瞭。さらに、日本の場合、多くの資産運用会社は金融グループの子会社的な位置づけのため、株主が親会社となる。よって、投資家との直接的な接点があるわけではない。
会社型ファンド
米国においては、「会社型」が大半を占める。法人格を保有するそれぞれのファンドには取締役会があり、ファンドの取締役が投資家に対してフィデューシャリーデューティーを負い、運用会社による運用状況を毎年評価する義務がある(1940年投資会社法15条(c))。投資家がこの投資法人の株主であるわけだから、投資法人の取締役は株主の利益を代表することは当然のことであろう。
さらに、米監督当局であるSECの規則では、取締役のうち50%以上はファンドを運用する運用会社に属さない独立取締役であることを求める。
ファンドを運用する運用会社も、投資家に対して忠実義務と注意義務を負う(1940年投資顧問法206条(1)(2))。
このように会社型ファンドにおけるガバナンスは、投資家に対して、運用会社・ファンド取締役の双方からフィデューシャリーデユーティーを定めた構造になっている。
このように、ガバナンスという観点から会社型と契約型を比べてみると、会社型の方がより構造的にガバナンスが効くようになっていると考えられる。
(参考)日本証券業協会「資産運用等に関するワーキング・グループ」第6回資料
https://www.jsda.or.jp/about/kaigi/chousa/TIFC_kondankai/20151110190527.html