本ページでは、先物理論価格について考えてみたい。
先物取引の概要については以下のページを参照されたい。
まず、先物理論価格は、以下の式で求めることができる。
先物理論価格=現物価格×〔1+(金利などの調達コスト-配当金などの収入)×(決済までの日数÷365)〕
この式がどのようにして求められるか、以下でまとめていく。(※議論の簡略化のため厳密でない部分も一部あるがご容赦いただきたい。)
先物価格は最終的に現物価格と等しくなる
まず前提知識として、先物価格は最終的に現物価格と等しくなるという点が重要だ。先物取引とは、株や金などの商品をある定められた価格で将来のある時点において購入・売却することができる取引であった。この「将来のある時点」を仮にX日後としたとき、X=0であれば、その時点において先物価格で直ちに決済しなければならないことを意味するが、これはその時点で現物を取引するのと結局同じことになるので、先物価格は現物価格と一致するより他ない。
「裁定取引」がもたらす先物価格と現物価格の関係
一つの思考実験として、今、30日後に満期を迎える金の先物価格が、現時点の現物価格より著しく高かったという状況を想定する。このとき、次のような売買を考えてみたい。
現時点において①先物を売る(=30日後、先物価格で金を売ることを約束する)と同時に②現物を買い、30日後に③先物を買戻すともに④現物を売るとする。
このとき、上記の理由から、③と④の価格(満期時点における先物価格と現物価格)は等しくなければならないので、
先物の売買益+現物の売買益=(①ー③)+(④ー②)=①ー②
の分だけ、すなわち現時点における先物価格と現物価格の差だけ、利益を生むことができる。ここで重要なのは、①も②も現時点の価格である、という点だ。つまり、将来の価格(③、④)の変動によるリスクを取ることなく、今わかっている価格だけで確実に利益を得られるということだ。
これは、③=④であるという性質を利用して利益を上げているわけだが、このことにマーケット参加者が気づくと、皆金利を払ってまで(つまり借金して)資金を調達し、上記の取引を行って利益を得ようとするだろう。このように、同一商品の価格差(あるいは金利差)を利用して利益を得る取引を「裁定取引」(アービトラージ)という。
皆が裁定取引をしようとすると、先物を売る人が続出し、結果的に市場原理により先物価格はどんどん下がっていく。ではどこまで下がるかというと、上記の取引においてマーケット参加者が支払わなければならない金額とつりあう水準まで、つまり現物価格(②)に金利を上乗せした分の金額まで、価格は下がり、結果的に上記の取引による利益はゼロとなる。
これがいわば「均衡」の状態となり、ここから先物価格が決定される。つまり先物価格は、現物価格に金利のコストを加えたものと等しい、ということに基本的にはなる。
ここで、改めて公式を見てみる。
先物理論価格=現物価格×〔1+(金利などの調達コスト-配当金などの収入)×(決済までの日数÷365)〕
一般に金利は年率で表されるが、例えば満期が1ヶ月の場合は年率の12分の1が金利として支払うコストになるので、式には(決済までの日数÷365)が加わっている。
さらに、現物として株式を保有している場合には、配当金が満期までに支払われる可能性がある。その分だけ、金利によるコストから差し引かれる。
以上により、先物の理論価格は導出される。