本ページでは、為替ヘッジの概要と、為替ヘッジコストの計算方法についてまとめたい。
為替ヘッジとは
外国の資産を外国通貨建てで保有すると、為替相場の変動に伴う資産価値の変動のリスクがある。例えば、1ドル100円であったときに5万ドルの資産を購入したとする。1年後、1ドル80円(円高)になったとすると、資産は4万ドルに減少してしまう。反対に1ドル120円(円安)になると、資産は6万ドルに増加する。これが為替リスクである。
為替変動による資産価値の変動を防ぐため、将来の為替レートを現時点で決めてしまうことができる。これが為替ヘッジである。上記の例でいえば、1年後に資産を売却する予定だったとして、1年後の為替レートを1ドル100円に固定してしまうというイメージである。これによって、円高に伴う資産価値の下落を避けることができる反面、円安による資産価値の増加の可能性もなくなる。
ヘッジコストの計算方法
実際には、為替ヘッジの際に決定される将来の為替レートにおいては、「ヘッジコスト」が考慮される。以下、具体的にヘッジコストがどのように決定されるかについて述べていく。
上記の例の通り、1ドル100円であったとする。為替ヘッジを行い、1年後の為替レートを決定するにあたっては、それぞれの通貨の市場金利を考慮する必要がある。
米ドルの市場金利が3%、日本円が1%であったとすると、1年後には1ドルが1.03ドル、100円が101円となる。この2つが等しくなるように、為替ヘッジを行う場合の1年後の為替レートは決定されるので、
1.03ドル=101円
∴1ドル≒98円
となる。1ドル100円であったときに比べて、米ドル建ての資産を日本円に変えた時の資産価値は目減りしてしまうことになる。これこそがヘッジコストである。
反対に、日本円の金利が4%であったとすると、
1.03ドル=104円
∴1ドル≒101円
となり、今度は資産価値が上昇することになる。この場合、ヘッジコストではなくヘッジプレミアムと呼ばれる。
以上でわかるとおり、ヘッジコスト(ヘッジプレミアムは)2つの通貨間の金利差で決定されるということが分かる。以上のように現時点において決定される「将来の為替レート」を、先物為替レートという。
(参考)上記の導出方法を取る理由
以上、ヘッジコストの計算方法についてまとめたが、将来の為替レート(先物為替レート)を現在において決定するにあたって、なぜ2つの通貨間の金利差を考慮する必要があるのだろうか。
ある2つの通貨の1年後の先物為替レートを考えるにあたり、1年間資金を運用する際の以下2通りの方法について見ていくことからスタートする。
(以下では例として、日本円:年率1%、米ドル:年率3%で、現在1ドル=100円であるとし、日本円を100万円持っているとする。)
①日本円のみで運用
・100万円×1.01=101万円
②米ドル建てにしてから1年間米ドルで運用し、最後に円建てに戻す
・100万円→1万ドル
・1万ドル×1.03=1万300ドル
・1万300ドル→??円(1年後の為替レートによって決定)
ここで、②の最終的な資産額は1年後の為替レートによって決まるわけだが、この金額がもし①と同じ101万円でないとすると、そこに裁定機会が生じることになる。例えば②の運用方法によって103万円になるとすると、投資家はみな②の運用方法をとることになる。そうすると通貨の需給バランスが変化し、為替レートも変化する。結局、②の運用方法でも資産額が101万円になるように為替レートは収束していく。
すると、為替レートは結局、
1万300ドル=101万円
∴1ドル≒98円
となる。
以上の通り、先物為替レートは、金利による運用益の観点から、裁定機会という考え方を用いることにより、導出することができる。