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レポ取引におけるヘアカットとは何か

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本ページではレポ取引におけるヘアカットとは何かについてまとめたい。ヘアカットとは、一言でいえば、担保である有価証券の価値を額面から一定程度割り引いて評価することである。 代表的にはレポ市場での取引において用いられる。

 

レポ取引におけるヘアカット

レポ取引とは、国債などの証券と引き換えに資金を借り入れ、金利をつけて返済する、というものである。短期的に資金調達を行う手段として主に金融機関の間で用いられる。

 

資金の借り手をA、資金の貸し手をBとすると、取引開始時に、A が持っている債券をBに貸し出し、その対価としてBから資金を得る。取引終了時には金利(厳密には借入金に対する金利と債券の貸借料の受け取りの差分)を加えて借りたお金を返済し、 逆に債券を返してもらう(言い換えればAが債券を買い戻す)。これがレポ取引の一連の流れとなる。

 

この際、担保に「ヘアカット」が設定される。「ヘアカット」とは 、担保の額面から価格変動リスク(市場リスク)等に応じて一定割合を割り引くことで、取引の安全性を高めることを目的とした仕組みである。例えばヘアカットが30%であれば、額面100万円の担保は70万円となる。ヘアカットが大きければ、資金の貸し手にとっては資金を全額回収できる可能性が高くなり、リスクを小さくすることが期待できる。一方で、資金の調達側にとっては、同じ担保でより少ない額しか調達できなくなってしまう。

 

例えば資金の借り手Aがデフォルトしてしまい、債券を買い戻すことができない(つまりお金を返せない)状況になったとする。このとき、債券の価格が下落していなければ、資金の貸し手Bはその債券を市場で売却することで、資金は基本的に回収できる。しかし債券価格が下落した場合には、Bは損を被ってしまう。そこで、ヘアカットを導入してAに資金を貸す額を割引けば、仮にAがデフォルトしかつ債券の価格が下落したとしても、Bは損失を抑えることができるようになる。

 

ただ、日本のレポ市場においては、そのほとんどが日本国債を対象としており、価格変動リスクが大きくないため、一般にヘアカットは設定されていない。欧米では、国債の他に証券化商品なども取引の対象となっており、ヘアカットが存在することが多い。


(出典):
日本銀行(2015)『レポ市場のさらなる発展に向けて』日銀レビュー