本ページでは、ヘッジファンドが金商法上どのように整理されるのかについてまとめたい。
まず前提知識として、資産運用を行う業者は、「投資運用業」か「投資助言・代理業」のいずれかに分類される。簡単に言えば、前者においては実際に顧客の財産を預かり、運用判断も業者が行う。一方、後者においてはあくまで投資助言を投資家に行い、実際の運用判断は投資家が行う。そのため、業登録のハードルは、「投資運用業」の方が高い(資本金や人的構成等の観点で)。
この2つの業者の行う業務は、例えばそれぞれ以下のようなものがある。
〇投資運用業
(1)投資一任業(2条8項12号ロ)
当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約(投資一任契約)。
(2)投資信託委託業(2条8項14号)
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、投資信託の受益証券等を有する者から拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと。
〇投資助言・代理業
(1)投資助言業務(2条8項11号)
当事者の一方が相手方に対して助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(投資顧問契約)を締結し、当該投資顧問契約に基づき、助言を行うこと。
(2)投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介業務(2条8項13号)
前置きが長くなったが、金商法上、「ヘッジファンド」という業者の類型は存在しない。
いわゆるヘッジファンド的な運用をしている運用会社は、主に投資運用または投資助言業者として登録を行っている。
投資顧問業協会の統計資料ページ(https://www.jiaa.or.jp/toukei/)に、具体的なヘッジファンドが金商法上のどの分類で登録をし、業務を行っているかを見ることができる。
これを見ると、ヘッジファンドといわれる運用業者は、主に投資運用業の中の投資一任、あるいは投資助言業として登録を行っていると思われる。
投資助言業については、例えば海外に本拠地を置くヘッジファンドが日本に拠点を置き、日本拠点が本社に対して投資助言を行なうというという形態を取り、実際の運用判断と執行は(日本株であっても)海外の本拠地が行う、というビジネスモデルが考えられる(参考:金融庁「投資運用業等登録手続きガイドブック」(2)主要な事業スキーム例①投資助言に関する業務を行う場合https://www.fsa.go.jp/policy/marketentry/guidebook/02.html#19)。この形態をとった方が、上述の通り投資運用で登録するより業登録が簡単である。