引当と減損の違いについて

本ページでは、財務会計における減損と引当の違いについてまとめたい。
いずれも企業の財務諸表における費用計上に関する会計処理であるが、その目的、発生の時点、対象資産、損益計算書上の位置づけにおいて明確な違いがある。以下にその相違点を整理する。
まず減損とは、企業が保有する固定資産やのれん、投資有価証券などについて、将来にわたって回収可能と見込まれる価値が帳簿価額を下回ると判断された場合に、その差額を損失として認識する会計処理である。これは資産の回収可能性に重大な変化が生じた場合に実施され、例えば特定の事業用資産が収益を生まなくなったケース、のれんが取得当初の想定より価値を失ったケースなどが該当する。
この減損損失は、損益計算書上では「特別損失」に分類されるのが一般的である。特別損失は、企業の通常の営業活動とは異なる、突発的・非経常的な費用を表示する区分であり、減損はまさにその性格を持つ。したがって、減損は「過去に発生した経済的損失が、当期に特別損失として費用認識される処理」と位置づけられる。
一方で引当とは、将来発生する可能性のある費用や損失に備えて、当期にその見積額を費用として計上する処理である。主な例としては、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金などが挙げられる。これらは、将来の支出が発生する可能性が高く、かつ合理的に金額を見積もることができる場合に限り、会計上の「見積り」として当期に費用化される。
引当金に対応する費用は、その性質に応じて損益計算書上の販売費及び一般管理費(販管費)あるいは営業外費用に分類される。例えば賞与引当金や退職給付引当金は通常、販管費に含まれる。一方、貸倒引当金の繰入額は販売費や営業費用に計上されることが多いが、金融機関などでは営業費用とは別枠で表示される場合もある。いずれにせよ、引当による費用は企業の通常の営業活動の一環として扱われるのが基本である。
以上のように、減損は資産の価値が著しく低下した「既に発生した損失」を当期に特別損失として計上する処理であり、引当は将来の支出や損失を見積もり「今のうちに計上しておく通常の営業費用」であるという違いがある。損益計算書上でも、減損が非経常項目として下段に位置づけられるのに対し、引当は営業利益の計算に含まれる経常的な費用として上段に反映されるという点で、企業業績への影響の出方も異なる。
このように、両者は会計的にはいずれも費用計上であるが、その背景、目的、表示区分は明確に異なっており、実務においても厳格に区別されている