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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

日本の機関投資家による運用は「保守的」なのか?

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日本の機関投資家は「保守的」と言われることがある。「保守的」というのは、運用にあたってあまりリスクを取ろうとせず、リスクが低いものリターンも低い資産に多く資金を配分しているということである。

 

機関投資家とは、典型的には企業年金など、集まった多くの資金を運用し、運用によるリターンを還元する主体である。

 

基本的なポートフォリオ理論では、相関度合いが低い複数の資産を組み合わせて投資することで、リスクを抑えつつリターンをあげることが可能となることが示されている。いわば「分散投資」である。また、長期で保有することで、一時的な相場の変動に依らず、長期的な経済成長による果実をリターンとして享受することができるため、(短期のトレーディングではなく)資産運用をする際には、長期保有が前提とされる。

 

以下では、機関投資家が保守的な運用を行っているとき、どのような要因が考えられるのか、いくつか仮説を述べてみたい。(これらは実際のデータで裏付けられている訳ではない。)

 

①単年度での成果が求められる

短い期間で成果を上げることが求められると、「一時的にも下がらない資産」への選好が強くなることは容易に想像できる。そうすると、分散(ボラティリティ)の少ない、安全な資産へ投資することとなり、結果的に運用が保守的になる。

 

②元本割れの忌避

①に関連するが、長い目で見ればリターンを上げられるけれど短期的には損をしてしまう恐れのある資産について、根強い恐怖心があることが考えられる。日本の公的年金を運用するGPIFがある年にマイナスのリターンを出してしまったときに、多くのメディアや一部政治家がGPIFを攻撃することがある。それだけ、「(一時的にでも)損をする」ことへの拒否反応が大きいと言うことである。

 

③頻繁に行われる人事異動

企業年金などの機関投資家においては、定期的な人事異動(典型的には2、3年)の一環として運用を担当するケースがあり、長期で見た際のリターンよりも、自分の在職機関中にはリスクを取らず、安定したリターンを出せるような運用に徹するインセンティブが生じている可能性がある。なぜなら、異動を繰り返すサラリーマンは、在職機関中のパフォーマンスによってのみ評価されるので、短期的には損をする可能性があっても長期的にはリターンをあげられるような投資戦略をそもそも描きづらい。

 

さらに、「この道20年の運用のプロ」という人材ではなく、ジェネラリストとして異動してきた担当者が、運用について深い見識を持っているとは考えにくい。こうして、確実に損はしない、無難な運用が選考される可能性はある。