本ページでは、バーゼル規制における流動性カバレッジ比率とは何かについてまとめたい。
流動性リスクの顕在化により、銀行の健全性が損なわれると、金融システム全体、ひいては実体経済にまで影響を及ぼしかねない。そこで、バーゼルⅢでは、流動性確保のために、流動性カバレッジ比率や安定調達比率といった規制を金融機関に求めている。今回は、前者について概説する。
流動性リスクについては、以下のページを参照されたい。
流動性カバレッジ比率とは
流動性リスクの顕在化として、危機時の大規模な資金流出が挙げられる。資金流出により資金繰りが困難となり業務の継続に支障が生じることを防ぐためには、ストレス時に予想される短期間の資金流出額以上に、ストレス時においても大きく価値が減ることなく、かつすぐに換金できる資産があれば、急な資金流出にも対処できる。そこで、バーゼルⅢでは、
を保つよう求めている。これは、30日という、短期的な流動性リスクに対応したものとなっている。
以下、分子と分母をそれぞれ見ていきたい。
適格流動資産(分子)
適格流動資産とは、簡単に言えば、ストレス時においても大きく価値が減ることなく、かつすぐに換金できる資産である。レベル1資産、レベル2A資産、レベル2B資産の区分があり、それぞれ適格流動資産に算入できる「算入率」が異なっている。具体的には、以下のとおりである。
レベル1資産
→算入率100%
レベル2A資産
→算入率85%
レベル2B資産
→算入率75%
- 一部の非金融債、上場株式
→算入率50%
レベル2資産全体で40%、レベル2B資産で15%が適格流動資産への算入の上限となっている。
30日間のストレス期間の純資金流出額(分母)
純資金流出額は、資金流出額-資金流入額、で計算できる。
資金流出額
30日が経過するまでに返済しなければならない金融機関や事業会社からの担保・無担保の調達(ホールセール調達)や、個人の預金(リテール預金)などが対象となる。ストレス時に流出の可能性が高いものほど、算入率が高く設定されている。
資金流入額
反対に、30日が経過するまでに返済される金融機関向け・事業会社向けの健全な貸出やレポ運用等が含まれる。確実に返済されると考えられるものほど、算入率が高く設定される。
(参考)