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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

リーマンショックとCDO、CDS

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2008年のリーマンショックの要因は、信用力の低い家計に対する住宅ローンであるサブプライムローンであると言われる。土地の価格が上がり続けると考えられたからこそ、信用力の低い人にも高額の貸付が行われた。つまるところ、土地バブルである。

 

リーマンショックにおいては、証券化商品といった複雑な金融商品が多数登場し、実態が見えにくくなっている面がある。本ページでは、リーマンショックにおける証券化商品がどう関わっていたのか、整理してみたい。

 

ローンを束ねてできたCDO

当時の金融機関は、リスクの高いサブプライムローンや、安全資産と呼ばれる国債などを束ねて証券化したCDO(Collateralized Debt obligation、財務担保証券)を組成し、投資家に販売していた。投資家にとっては、信頼性の高い債券も含まれているのでリスクは抑えられており、利率の高いサブプライムローンも組み込まれているので、魅力的な投資商品に映った。

 

しかし、いつまでも土地神話が続くこともなく、ある時を境にサブプライムローンへの格付けが下がり、これに伴いCDOの価格は急落。CDOを組成していた金融機関は大損を被り、その筆頭格であるリーマン・ブラザーズは破綻した。世界的金融機関の破綻は、市場の動揺を招き、銀行の融資の縮小(信用収縮)が発生、世界的に実体経済へ強い下押し圧力がかかった。これがリーマンショックである。

 

複雑な金融商品である「CDO」は、サブプライムローンの高いリスクを言わばカムフラージュした形となり、投資家や金融機関がリスクに盲目となった要因とも言われている。

 

保険のように機能するCDS

CDOという金融商品が万一下落しても良いように、一部の投資家はCDS(Credit default swap)契約を結んでいた。CDS契約を結ぶ投資家は、定期的にプレミアムをCDS発行者に払うのと引き換えに、保有する金融資産に大きな棄損が生じた場合に、売り手から補償を受けられるというものだ。保険のような機能を持つ。

 

まさか土地価格が下がると思わず、サブプライムローンが組み込まれたCDOへの補償を約束したCDSを大量に投資家に発行していたのは、保険会社のAIGである。リーマンショック時、価格が下落したCDOに対する補償金額が莫大となり倒産が想定されたが、米国政府の公的資金により倒産は免れた。

 

逆に、元からCDOの実態を疑問視していた一部の投資家(ヘッジファンド)は、CDSを買うことで、リーマンショック時に莫大な利益を上げることができた。CDSの特徴として、実際に対象となる金融商品保有していなくても、その金融商品の価格が下落した分のお金を受け取れるという点があげられる。この特徴を利用して、CDSで大儲けする人もいた。

 

 

以上のように、リーマンショックにおいては、複雑な金融商品が多く関連していたことが分かる。この複雑性は、当事者から物事の本質を見えづらくし、彼らが事態の深刻さに気づけなかった要因なのかもしれない。

 

証券化CDSについての詳しい説明については、以下の記事を参照されたい。

参考記事:

証券化とは何か - 金融アトラス

CDSとは何か - 金融アトラス

野村証券レポート(2009)「金融危機に伴い関心集める CDS 市場」