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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ライフセトルメントとは何か―生命保険の買取―

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本ページでは、ライフセトルメントとは何かについてまとめたい。ライフセトルメントとは、個人の生命保険契約を第三者に売買する取引のことである。主に米国で発展しており、保険契約が市場で流通している(セカンダリーマーケット)。

 

ライフセトルメントの仕組み

個人は第三者(投資家)に保険契約を移転する代わりに、第三者は個人に一定の額を支払う。その後、第三者は保険会社に対して保険料を支払うが、個人の死亡や健康状態の変化等、保険料支払いの条件が満たされたときには、保険料が三者に支払われる。保険契約が市場で流通しても、あくまで最初に契約した個人の健康状態によって保険料の支払いが発生するというのは特筆に値する。

 

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ライフセトルメント概念図

 

個人にとっては、保険を解約した際に戻ってくる解約返戻金よりも、流通価格(第三者に売却した際に得る価格)が一般に高いため、その差分がライフセトルメント取引を行うインセンティブとなる。解約返戻金の額は保険によって異なり、これまで支払った保険料の総額に対して戻ってくる解約返戻金の割合(返戻率)が保険ごとに定められている。

 

一方、投資家にとっては、ライフセトルメントを通じて伝統資産の価格変動とは相関の低い、新たなリターン源泉として位置づけることができる。

 

しかしながら、ライフセトルメントにはリスクもある。代表的なものは「長寿化リスク」である。医療の進展等によって平均寿命が延び、対象となる個人の長寿化が起こると、保険料支払が増加するのに加えて保険金受取時期も延びてしまう。

 

日本におけるライフセトルメント

米国では発展しているライフセトルメントであるが、日本では市場は未成熟である。日本では過去、生命保険買取業者へ保険契約者の地位を譲渡することについて、生命保険会社が同意を拒否し、裁判で争われた事例があった。そこで、裁判所もその同意拒否を認める判決を下したのである。こうした経緯もあり、日本での生命保険契約の買取は困難であるとの見方もある。

 

(参考):野村総合研究所(2008)『生命保険流通市場とライフセトルメント投資』

 辻 美枝(2016)『生命保険買取と所得課税―米国との比較を中心に―』生命保険論集第 194 号