本ページでは、銀行の流動性リスクについてまとめたい。
ある資産の流動性があるとは、市場で十分な取引量がある等の理由により、「資産を市場から調達しやすい」あるいは「資産を売却して換金しやすい」といったことを意味する。
銀行における流動性リスク
銀行は、預金や市場から調達した資金を、貸出や資産への投資を行うことで運用する。そして運用した資産は最終的には回収し、負債を返済したうえで、利益を確定させる。簡単に言えば、調達→運用→回収→返済、という一連の流れである。この流れのどこかが機能不全に陥ってしまうと、業務に支障をきたし、ひいては経営の健全性に悪影響を及ぼす可能性もある。
この一連の流れがスムーズに動くためには、冒頭で述べた「流動性」が十分にあることが前提となる。流動性が十分にある状態、つまり市場で十分に取引されている状態においては、調達したいときに、調達し、売却したいときに売却できる。反対に、流動性が少なく、市場の供給が極めて小さい場合、必要な資金確保が困難となったり、著しく高い高い金利で資金調達しなければならない可能性がある。また、資産の売却が困難となり、著しく不利な価格で取引を行わなければならなくなる可能性もある。
このように、「流動性」は健全な銀行経営のために非常に重要な要素であるが、この流動性が不足することによるリスクを「流動性リスク」という。
具体的な流動性リスク
以下、資金の①調達、②回収・返済の各場合において、具体的に流動性リスクがどのように顕在化するかについて見ていく。
①資金の調達
- 銀行の信用不安等により、預金が流出する場合。預金は銀行にとって主要な、かつ平時であれば安定的な資金調達源であり、預金が大幅に流出すれば貸出を行うことが困難となる。
- 流動性の不足により市場からの調達が困難となる場合。例えば、「インターバンク市場」という銀行間の市場において、日々の資金繰りのための資金である「コールマネー」が取引される。こうした市場からの調達が、流動性の不足により困難になる、あるいは供給が少ないために著しく高い金利で調達せざるを得ない可能性がある。
②資産の回収と負債の返済
上記のような状況では、資金を満足のいく形で回収できず、負債の返済が困難となってしまう恐れがある。
流動性リスクの顕在化により、銀行の健全性が損なわれると、金融システム全体、ひいては実体経済にまで影響を及ぼしかねない。そのため、各国の中央銀行は、危機時の金融機関に対する流動性の供給という役割を担っており、「最後の貸し手」と呼ばれる。
また、バーゼルⅢでは、流動性確保のために、流動性カバレッジ比率や安定調達比率といった規制を金融機関に求めている。
(参考)日本銀行(2013)『流動性リスクの把握と管理』