本ページでは、信用取引における「追証」の仕組みについてまとめたい。
信用取引やレバレッジの考え方については、以下のページを参考にされたい。
レバレッジとは?てこの原理の様なものとは言うけれど… - 金融アトラス
追証とは、信用取引において証券会社に対して追加に差し出す必要のある保証金のことである。どのような時に追加の保証金が必要になるのか、説明していきたい。そのためにまずは、保証金とは何か、取引にあたってどれほどの保証金が求められるのか、について整理することから始める。
信用取引と保証金
まず、信用取引においては、自己資金である保証金に、証券会社から借入れる資金を加えることで、少ない自己資金を元手に多額のお金を取引するレバレッジ取引を行うことができる。
保証金は、いわば担保のようなものであり、取引による損失がでたら担保から損失を充当する。そうでなければ、お金を貸している証券会社が損失を被ってしまうことになる。保証金は、現金か、株などの有価証券でも認められる。
委託保証金率と委託保証金維持率
では、どれだけの保証金が必要なのか。①取引の開始時と、②取引の最中で、必要な保証金の大きさが変わってくる。
①取引の開始時
取引を開始する時、取引する額の30%かつ30万円以上を証券会社に差し入れなければならない。例えば300万円取引しようとするとき、90万円の保証金が必要だ。この割合は委託保証金率という。
②取引の最中
取引の最中も、取引額に対して一定割合の水準の保証金を維持する必要がある。これを委託保証金維持率と言い、最低20%の委託保証金維持率が求められる。
なお、以上に挙げた割合は法定の最低値であり、証券会社によって実際に適用される比率は異なる。
追証は委託保証金維持率が下がる場合に発生
ここでようやく本題の追証についてである。追証は、委託保証金維持率が最低水準を下回りそうな時に、追加で差し入れる必要のある保証金のこと。
では、取引している間の委託保証金維持率はどのような要因で低下するのだろうか。
①保証金として差し出している株などの価値下落
保証金(担保)としている株式などの価格が減れば、いわば分子が小さくなるため委託保証金維持率は低下してしまうので、追証が必要となる。
②投資している株などの価値下落
保証金と借り入れたお金を用いて売買を行うのが信用取引であるが、投資した株の価格が下落すると、その損失分は保証金から充当される(下図)。
そうすると、取引額全体に対しての保証金の割合が小さくなるため、委託保証金維持率は低下する。
なお、追証に応じることができず、当初差し入れていた保証金以上の損失が発生してしまうと、その分は証券会社が損失として負わなければならない。こういうときは、証券会社が強制的に取引している株を売却することで、これ以上の損を防ぐことがある。
2021年、アルケゴスというファミリーオフィスとの契約で上記のような状態になったゴールドマン・サックスは、取引している銘柄を強制的に売却したとされる。野村証券もアルケゴスと取引をしていたが、ゴールドマンよりも動き出しが遅れ、多額の損失を出したとされる。
追証は、信用取引においてできるだけ避けたいものであることは間違いないだろう。