本ページでは、行列演算を用いた連立方程式の解き方についてまとめたい。
行列を用いた連立方程式の表現
以下の連立方程式を考える。
2x+y+z=3
x+3y-z=-4
-x+2z=3
この連立方程式を行列で表現すると以下のようになる。
ここで、
を係数行列、
を拡大係数行列という。連立方程式をAX=Bと表現した時、Aが係数行列、[A|B]が拡大係数行列となる。
階段行列と階数
階段行列とは、以下を満たす行列である。
・行番号が増えていく(上から下に見ていく)につれて左端から連続して並ぶ0の数が増えていく
・その行に主成分(行列を左から見た時に、各行で初めに出てくる0以外の成分)が無く全ての成分0である場合、それより下の行は同じように成分が0である
そして、階段行列の中で、0でない成分が残っている行の数を階数という。
例えば、
は階段行列であり、その階数は3となる。このとき、rankA=3 と表現する。
連立方程式の解の数
連立方程式AX=Bに関し、
rankA=rank[A|B]であれば、連立方程式に解が存在する。
rankA≠rank[A|B]であれば、連立方程式に解は存在しない。
さらに、解が存在する場合、未知数がn個、階数がrankA=rank[A|B]=rであるとすると、
n-r>0 であれば、無数に解が存在する。
n-r=0であれば、ただ一組の解が存在する。
連立方程式の解き方
行列を用いて連立方程式を解くには、まず以下の基本的な行の変形を用いる。
・ある行をk倍する(k≠0)
・ある行に、別のある行のk倍を加える
・ある行と別のある行を入れ替える
この基本変形をもとに、係数行列を単位行列に変形することを目指す。単位行列とは、
正方行列(行と列の数が同じ行列)の対角線上の要素(対角要素)がすべて1で、それ以外の要素がすべて0の行列のことを言う。
例えば、
という連立方程式を考える。解を求めるにあたり、以下の要領で式変形を行う。
①2行目+1行目×3、3行目ー1行目×2
②1行目ー2行目、3行目+2行目×3、2行目÷2
③3行目÷17、1行目+3行目×7、2行目ー3行目×4
このように、基本変形を用いて左の列から順に階段を作っていく。
すると、
となり、x=3, y= -2, z=1
という解が求められる。
クラメルの公式
連立方程式の解法にクラメルの公式というものがある。以下、クラメルの公式を用いるにあたっては行列式の知識が必要となるが、行列式の概要については以下のページを参照されたい。
未知数がx_1, x_2, ..., x_nである連立方程式AX=Bについて、
|A|≠0のとき、
となる。A_nは係数行列のi列をBの成分で入れ替えたものである。
例えば、
という連立方程式について、
となる。|A|=-2であるため、
x_1=-4, x_2=9/2
が解となる。