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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

MMFの金融システムにおける役割について

 

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本ページでは、MMFマネー・マーケット・ファンド)の金融システムにおける立ち位置について考えてみたい。

 

MMFとは

MMFとは投資信託(ミューチュアルファンド)の一種。主に、企業が信用力に基づいて無担保で短期的に資金調達を行うための約束手形であるCP(コマーシャルペーパー)や、国債などの高格付けの短期証券に投資するもの。元本保証とはいかないものの、株式投信に比べればずっとリスクは低い。

 

銀行を通さない信用仲介

ここで、MMFの金融システムにおける役割を考えてみる。MMFの構造は、投資家から資金を集め、それを資金調達がしたい企業や、国などに貸付ける、というものである。

 

これは、預金を集めてそれを企業に貸出する、という銀行の仕組みと、類似したものということができる。その意味で、銀行以外の与信行動を行う主体、と言える。

 

銀行について言うと、銀行にとって主要な、かつ平時であれば安定的な資金調達源である預金が大幅に流出すれば(いわゆる取付け)、貸出を行うことが困難となり、その銀行の経営の健全性、ひいては金融システム全体に影響を与えかねない。いわゆる、流動性リスクである。そこで、銀行に対しては厳しい規制が整備されているのに加え、中央銀行による危機時の資金供給(最後の貸し手機能)といったセーフティネットもある。

 

一方、MMFの場合、銀行と類似した与信行為を行なっているにも関わらず、銀行よりも規制が緩い。しかし、例えばMMFの投資家が一度に大量に解約を行うと、銀行における「取付け」と同じような現象が起こることが考えられる。MMFの規模は近年拡大を続けており、金融システムにおける影響力が高まっている。MMFの大量解約が、流動性を枯渇させ、資金調達主体への融通が困難になれば、経済への影響も懸念される。

 

MMFのような、銀行と類似した信用仲介を行なっている主体を「シャドーバンキング」といい、国際的な金融規制について議論するFSB(金融安定理事会)にて、シャドーバンキングに対する規制の整備が進められている。

 

(参考)みずほ総合研究所(2017)『国際金融規制と銀行経営 ビジネスモデルの大転換」