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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

NFTとマネーロンダリングについて

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近年NFTが注目を集めているが、NFTによるマネーロンダリングが懸念されている。本ページでは、NFT取引において懸念されるマネロンについてまとめたい。

 

NFTとは

そもそもNFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、代替不可能なトークン、という意味である。平たく言えば「唯一無二」なデジタル資産、ということができる。ブロックチェーン技術を用いて、それぞれのデジタル資産に固有のIDを付与し、その資産が唯一無二であることを証明する。デジタルアートやゲームのアイテム、会員権など、NFT化できるものは様々であるが、いずれにしてもデジタル上のコンテンツを「資産」として扱うことができることが画期的である。NFTを購入した人は、それを他の人に売ることもでき、金融市場と同じように売買取引を行うことができる。

 

マネーロンダリングとは

マネーロンダリングとは日本語に訳せば「資金洗浄」である。麻薬取引などの非合法の手段で手に入れた「汚れたお金」を、合法的な(ように見える)「綺麗なお金」に変えることを意味する。

 

例えば麻薬取引などで大金を手にしたとき、それが麻薬取引によって手にしたお金だと気付かれないようにする必要がある。これこそがマネーロンダリングの本質であり、「綺麗なお金」に変えるということの意味である。

 

伝統的に、古物商やジュエリーショップ、質屋などがマネロンの舞台となることがあるが、NFTもマネロンの標的にされる可能性がある。

 

NFTを用いたマネーロンダリング

マネロンの手口として、非合法の手段で得た資金を合法的な取引の中に組み込むことが考えられる。例えばあるデジタルアートを法外な値段で購入し、それをどこかで売却すれば、違法な収益を合法的な取引の中に組み込むことができる。芸術の世界では既に大きな問題になっているが、NFTも同様の手口が可能と考えられる。

 

また、同一人物・組織が二つのアカウントを用いてある資産の売買を同時に行うことも考えられる。デジタルアートなどのNFTは、価格に関して市場参加者のコンセンサスが得られているとは言い難い。そのため、極論すればデジタル上で適当に作った絵を「アート」と主張する人、その「アート」を高く評価し大金を出して購入するする人、それぞれを演じることは比較的容易なのではないか。

 

さらに、マネロンで重要なことは、その資金がどこから来たのかを分かりづらくすることである。そのための一つの手法として、金券や金融商品、あるいは車などの現物といった換金性の高い商品を汚れたお金で一旦購入し、すぐに売却するなどを繰り返す、というものがある。NFT商品を購入し、それをまたどこかで売却する、といったことを繰り返すことで、資金の出所を分かりづらくすることができる。

 

今後は、NFTが取引される場である「マーケットプレイス」において、ある一定額以上の取引においては本人確認が求められる、などの対応が発生する可能性もある。

 

(参考):

As more artists and musicians turn their attention to NFTs, so, likely, do money launderers – TechCrunch

天羽健介、増田雅史(2021)「NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来」