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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

「ワンウェイ規制」とは何か

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本ページでは、銀行の「ワンウェイ規制」とは何かについてまとめたい。一言でいえば、銀行が他業種に参入することは厳しく禁じられている一方、他業種の企業が銀行業に参入することは可能であるという、非対称な規制の実態を指す。

 

まずは、そもそも銀行の業務に関する規制はどのようになっているか、から話を始めたい。

 

銀行の「業務範囲規制」

銀行は、その業務範囲について厳しい規制が課されている(業務範囲規制)。具体的には、

 

  1. 銀行の業務範囲は、預金や貸付などの固有業務と、それに付随する業務に限られる(銀行法10条~12条)。
  2. 銀行が子会社にできる会社は、基本的に、金融機関をはじめとした金融関連業務を行う会社に限られる(銀行法16条)。
  3. 子会社化できない会社(一般の事業会社等)について、銀行とその子会社が取得できる議決権の上限は5%であり、銀行持株会社と子会社の合算では合計15%を上限としている(銀行法16条、52条)。

 

ここで、銀行持株会社とは、具体的な業務を行わず、銀行や証券、といった金融機関の株主となり、専らこれらの金融機関の管理を行う会社のことである。いわゆる「フィナンシャルグループ」と呼ばれるものである。

 

「業務範囲規制」を課す理由

なぜ、以上のように銀行の業務内容について規制が厳しく課されているのか。金融庁の「監督指針」には、その理由として以下の3つを上げている。

 

①銀行が銀行業以外の業務を営むことによる異種のリスクの混入を阻止

ある銀行が経営破綻などをしてしまうと、その損失が金融システム全体に連鎖し、システミック・リスクにつながる恐れがある。その意味では、銀行経営の健全性は非常に重要である。よって、むやみやたらに他産業に参入してリスクを取ることに対して、金融システムの安定の観点から規制を課している。

 

②銀行業務に専念することによる効率性の発揮

経済成長や安定のために銀行は極めて重要な役割を担っており、銀行業に専念し効率的な業務を行うことを通じて、銀行本来の目的である金融仲介機能、信用創造機能、決済機能を十分に発揮することが求められるという考えである。

 

利益相反取引の防止

銀行が他業種に参入すると、その業務における銀行の利益と、例えば本来の貸出業務における顧客にとっての利益が対立する恐れがある。そうすると、銀行は自らの利益を優先するあまり、顧客本位の融資行動を行わない可能性がある。

 

いずれにしても、銀行業務の経済における重要性の高さから、銀行が高い公共性を帯びていることが前提となっていると考えられる。

 

「ワンウェイ規制」の概要

前置きが長くなったが、ここで「ワンウェイ規制」の意味について考えてみたい。

 

銀行については上記の通り、他業の参入について厳しい規制が課せられている。一方、事業会社が銀行の株式を保有することについて、特段の規制はない。よって、銀行は他の業務ができないのに、他業種は銀行業を営むことができるという、非対称的な関係が存在している。

 

この「ワンウェイ規制」については、見直しを求める声も多いが、銀行法によって課せられた業務範囲規制を緩めることについては、大きな議論があるのが現状である。

 

参考:金融庁説明資料