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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

投資信託におけるオープン・アーキテクチャーとは

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本ページでは、投資信託におけるオープン・アーキテクチャーとは何か、そして日本の現状についてまとめたい。オープン・アーキテクチャーとは、一言でいえば、投資信託を販売する販売会社が、系列の運用会社の投信のみならず、幅広い運用会社の投信を販売する形態を指す。

 

運用会社と販売会社

日本の資産運用業界の一つの特徴として、投資信託は資産運用会社が直接販売する(直販)のではなく、販売会社を通じて販売されるという点があげられる。

 

さらにもう一つの大きな特徴としてあげられるのは、大手を中心に日本の多くの資産運用会社は、金融グループに属し、系列の販売会社が存在するという点である。例えば、野村アセットマネジメントであれば野村證券という販売会社が存在する、といった具合である。そして、運用会社と系列の販売会社は非常に強固な結びつきがあることで知られている。

 

日本におけるオープン・アーキテクチャ

日本においては、上記のような特徴もあり、オープン・アーキテクチャーが十分に進んでいないのではないか、という意見がある。つまり、販売会社が、系列の運用会社の商品ばかりを売っているのではないか、ということだ。

 

受託者責任(フィデューシャリー・デューティ)という観点で考えれば、販売会社は顧客にとって最良な商品を提供しなければならないが、それが系列の運用会社の商品で固められているのではないか、という懸念である。オープン・アーキテクチャー化が進み、系列の枠を超えて本当に良い商品のみラインナップに並べるようになれば、運用会社間の競争が高まり、投資家に質の高い商品が提供されると考えられる。(個人的には、各販売会社が熟慮の結果系列の運用会社のファンドを中心に並べるのは、それはそれで問題ないと考える。)

 

ただし、日本で中小の資産運用会社にとっては、ビジネスに入り込むのが難しいのは間違いない。主要な販売会社の商品ラインナップが、系列の運用会社で固められていると、新興の運用会社が入り込む隙はない。これは、運用会社間の競争環境という観点では望ましくないと考えられる。

 

ただし、最近では大手のネット証券が、あらゆる運用会社の投資信託をラインナップに揃えている。そうした中に、中小の運用会社の商品も多く入っている。

 

そして、反対に、運用会社の側からも同じことがいえる。ある運用会社が組成した投資信託が、系列の販売会社にしか売られないとしたら、より幅広い投資家がアクセスすることが難しくなる。さらに、その販売会社にしか売ることができないとすれば、その販売会社が売りやすい商品を作る必要に迫られ、運用会社が本当に作りたい商品を作れない可能性もある。

 

以上、投資信託の商品ラインナップを、運用会社と販売会社という視点で考えたが、いずれにせよ、投資家が本当に良い商品を、分かりやすい形で選択できる環境が整う必要があると考える。

 

(出典):

杉田浩治(2016)『投資信託の販売をめぐる世界の動向』、日本証券経済研究所

日本投資顧問業協会(2015)『拡大版コーポレートガバナンス研究会』