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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

組合型ファンドの種類について

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本ページでは、組合型ファンドにはどのような種類があるかについてまとめたい。

そもそも、ファンドにはどのような種類があるかについては、以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

組合型ファンドの一般的な特徴としては、組合という法人格を持たない性質のため、ファンドに対して法人税が課されず、利益に対して二重課税が発生しない点が挙げられる。

 

また、組合型ファンドは一般的に投資家が少数であるPE(プライベートエクイティ)、VC(ベンチャーキャピタル)などで使用されることが多いことも特徴である。

 

組合型ファンドの選択にあたっては、出資者の有限責任が認められるか、ということが重要になってくる。有限責任とは、ファンドの債務返済が困難になったときに、自らの出資額を超えてその返済に責任を持たなくてよいことを意味する。反対に無限責任の場合、ファンドへの出資額を超えて、自らの資産を使ってでも返済を行う責任がある。投資家にとっては、有限責任の方が都合がよいことは間違いないだろう。有限責任の組合員をLP(リミテッドパートナー)、無限責任の組合員をGP(ジェネラルパートナー)という。

 

以下、各組合型ファンドについて具体的に述べる。

 

任意組合(民法上の組合)

任意組合とは、民法上定められた組合契約である。任意組合の特徴は、出資者全員が無限責任を負担するという点である。

 

任意組合のメリットとして、投資対象に特段の制限がなく、組合に対する監査も必要がないので、運用者にとっては扱いやすいという点が挙げられる。

 

匿名組合

匿名組合とは、出資者と営業者が1対1で結ぶ契約であり、営業者は出資者に対して、営業によって生じた利益を分配することを約束するものである。出資者は、匿名で出資することが可能である。出資された財産は営業者に帰属し、出資者は事業を行う権利がない匿名組合員は、有限責任であるため、出資額を超えて損失を被ることはない。

 

不動産流動化や、クラウドファンディングといった分野での使用例が多い、

 

投資事業有限責任組合(LPS)

経産省が所管する「投資事業有限責任組合契約に関する法律」によって定められている「投資事業有限責任組合」は、PE組成において一般的によく使われる。

 

最大の特徴は、一部の組合員が「有限責任組合員」になることが認められている点である。その代わり、有限責任のみを有する場合はファンド運営を行ってはいけない。よって、ファンドを運用する運用会社が無限責任組合員(GP)となり、投資家が有限責任組合員(LP)となる。

 

運用者にとって制約になるのは、出資額の50%以上を国内に投資しなければならないという点である。これは、この法律の基本思想が「国内企業に資金を供給する」ことを前提としているためである。よって、海外に投資するファンドを組成する場合は、投資事業有限責任組合によく似た海外籍のファンドである「リミテッド・パートナーシップ」が用いられる。

 

もっとも、海外投資家をもっと呼び込んで市場を活性化させる観点から、この「50%要件」の見直しを求める声は大きい。

 

有限責任事業組合(LLP)

有限責任事業組合(LLP)では、投資事業有限責任組合(LPS)とは異なり、組合員全員が有限責任であり、出資額の範囲までしか組合の債権者に対して責任を負わない。

 

さらに、取締役会や監査役のような経営者に対する監視機関の設置が強制されないなど、柔軟な運営が可能となる。

 

一方で、LPSでは無限責任組合員のみがファンド運営を行えるという決まりになっているが、LLPでは業務執行において全組合員の同意が必要となる。さらに、組合員が新規加入又は脱退する際には、その都度、組合員全員の意思決定に基づく契約変更の手続が必要である。そのため、少人数で各出資者がある程度主体的にファンド運営に関わる場合には、LLPの利用が有用である可能性がある。

 

(参考)

幸田博人ほか(2020)『プライベート・エクイティ投資の実践 オープン・イノベーションが企業を変える』、中央経済社

 

有限責任事業組合(LLP)制度の創設について(METI/経済産業省)

 

米田保晴(2004)『匿名組合の現代的機能(1)ーその現状と法律上の論点ー信州大学法学論集 第4号