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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

パッシブ運用の問題点ーアクティブ運用の意義とはー

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パッシブ運用の規模が世界的に拡大している。インデックス(日本で言えば日経平均TOPIX)に連動する形の投資信託ETFがアクティブ投信の規模を凌駕しつつある傾向が、世界的に見られる。

 

パッシブ運用の魅力は、アクティブ運用と比べて安いコストで投信を買えること、また、長期運用を前提とすれば、市場全体の成長に連動してリターンを出せるので、リスクを抑えつつリターンを得られる可能性が高いといった点である。

 

日本では、日銀が数十兆規模でETF(市場に連動する投資信託で、株と同じように取引所に上場しているもの)を購入しており、投資信託マーケットの中で大きな存在感を見せている。

 

こうした中、このままパッシブ化が進んだとき、市場はどうなるのだろうか。

 

アクティブ運用の機能

ここで、アクティブ運用にはマーケットにとってどのような意義があるのかについて考えてみたい。

金融論の基礎的な教科書にも載っている考え方に、「効率的市場仮説」というものがある。これは、マーケット参加者は各企業に対して十分な分析や情報収集を踏まえて売買を行なっているため、そういった情報が全て価格に反映されているとする考え方である。

 

こうした効率的な市場は、アクティブ運用を行う多数の市場参加者によって成し得るものである。市場参加者の情報収集や分析を通じて、効率的な株価が掲載されることを価格発見機能という。 

 

さらに、多数のアクティブ運用を行うマーケット参加者の存在は、市場における効率的な資金配分にも寄与する。成長企業に資金がより供給され、停滞する企業からは資金が離れていく。こうして、真に必要とされるところに資金が供給される結果、経済成長が実現される。

 

パッシブ化が進むと

パッシブ運用とは、市場の銘柄を「全て買う」というものである。よって、個々の企業の業績や将来性についての分析は行わず、インデックスのリストに載っていれば買うのである。

 

もし市場参加者の大半がパッシブ運用を行えば、上記で書いたような価格発見機能は失われる。そうすると、株価がその企業の実態を表したものではなくなり、「市場の効率性」が失われる。

 

さらに、効率性が失われるのと並行して、インデックスに組み込まれているものの業績が停滞しており将来性もない企業、いわば「ゾンビ企業」にも、お金が安定して供給されることになり、市場の新陳代謝が弱くなる。成長企業への資金供給が十分になされない可能性もある。

 

日本の場合、東証一部上場企業が全て対象であったTOPIXに連動する商品に、機関投資家を中心に多額の資金が投資されてきた。TOPIXの中には必ずしも将来性があるとは言えない企業も含まれており、経営体力の弱い企業を温存させているのではないかという批判もあった。(2021年現在、TOPIXの組み入れ銘柄については見直しが進められている。)

 

パッシブ運用による恩恵は大きいが、アクティブあってのパッシブであると言うことができるだろう。

 

 

(参考)株式会社格付投資情報センター (2011)

R&Iレポート vol.39 アクティブ運用の意義