<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

パススルーとペイスルー-二重課税の回避-

f:id:hongoh:20210316221906j:plain

本ページでは、ファンドへの課税における「パススルー」と「ペイスルー」の概念の違いについてまとめたい。どちらも、法人税所得税の「二重課税」を防ぐしくみであり、「導管性」を持つという言い方をされる。

 

二重課税について

器(ビークル)であるファンドに「法人格」があると、発生したリターンに対してまず法人税が課され、その後投資家に分配される段階で所得税が課されてしまう。このように税金が二重に取られてしまう構造を「二重課税」という。

 

パススルー

二重課税を防ぐためには、ファンドが法人格を有さなければ良い。多くのPEファンドでは、法人格を有さない「組合型」のファンドが選択される。組合型ファンドは法人ではないので、法人税は課されず所得税のみの課税にとどめることができる。このように、ファンド段階では課税されず、投資家段階でのみ課税されるスキームを「パススルー」という。

 

組合型のファンドには、任意組合有限責任事業組合投資事業有限責任組合などがある。

 

ペイスルー

ファンドに法人格がある場合でも、投資家に対する配当が損金算入されれば、法人課税を避けることができる法人税は益金-損金の額に対して課税されるので、配当が損金に入れば法人課税の対象外となる)。損金算入することで法人課税を逃れるしくみを「ペイスルー」という。

 

不動産投資にて用いられている投資法人や、特定目的会社にて、ペイスルーできる要件が定められており、「導管性要件」という。配当可能利益の90%超の利益の配当を行っていることや、全体の募集額のうち50%以上が国内で募集されていることなどが導管性要件となっている。

 

 

以上、パススルーとペイスルーの違いについてまとめたが、それぞれ対象となっているファンドの類型が異なっている。そもそもファンドにはどのような種類があるのか、については、以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

(参考)

EY税理士法人(2016)『インフラ投資法人の導管性要件 平成28年税制改正を受けて』

幸田博人ほか(2020)『プライベート・エクイティ投資の実践 オープン・イノベーションが企業を変える』、中央経済社