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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

積立方式と賦課方式の違いについて簡潔にまとめてみる

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本ページでは、年金給付における賦課方式と積立方式の基本的な違いについて簡単にまとめてみたい。

 

積立方式

積立方式は、現役世代の収入により積み立てたお金を、将来現役世代が高齢者になった時に給付される年金の原資にするというもの。簡単に言えば、「自分達の年金は自分で

準備する」という考え方である。いうまでもなく年金給付の財源はどこかから湧いてくるものではない。積立方式はその財源を「受給者が若いときの保険料支払い」で賄うというものである。

 

賦課方式

賦課方式とは、現役世代が積み立てたお金を、その時の高齢者世代への給付の財源とするというもの。「高齢者の年金給付は、その時の現役世代の支払いで賄う」という考え方である。単年度決算である、という言い方もできるかもしれない。

 

現在は賦課方式で運営

現在、日本を含む主要国では、賦課方式で運営されている。その理由は、賦課方式では現在の現役世代による保険料支払いをその時の高齢者の年金給付の財源にするため、インフレなどの経済動向に左右されずに済むからである。

 

積立方式の場合、例えば50年のうちに物価が2倍となったら、100万円積み立てていても、50万円の価値しかなくなってしまうため、積立方式は物価の変動に脆弱である。

 

さらに、不況により積立金の運用先にしていた株などの資産価値が大きく下落すると、積立金が大きく減少してしまう。このようにマーケットの動向に対しても積立方式は影響を受けてしまう。

 

賦課方式の限界

しかし、賦課方式には限界もある。少子高齢化が進んでいる昨今、「少ない数の現役世代が、多数の高齢者を支える」という構造となっている。この仕組みが成り立つには、現役世代による保険料支払いを増やすか、高齢者の給付を減らすしかない。

 

こうした観点から、少子高齢化の進行具合を考慮して、年金給付が将来にわたって安定するよう、物価の伸びや賃金の伸びと比べて給付の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」導入されている。例えば物価が3%上がり、マクロ経済スライドにより1%給付を抑制するとすると、給付額の伸びは2%になる。

 

また、一部積立方式の考え方も導入されている。人口が多いいわゆる「団塊の世代」が現役世代だった時に、保険料支払いのうち年金の支払いに充てられなかったお金が「年金積立金」として積み立てられている。この年金積立金が、GPIFという運用機関によって市場で運用されており、運用利回りを将来の年金の支払い原資に回すしくみとなっている。