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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

プロシクリカリティへのバーゼルⅢにおける対応

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本ページでは、バーゼル規制において指摘されていたプロシクリカリティについて、バーゼルⅢで新たに講じられた対応策についてまとめたい。プロシクリカリティの概要については、以下のページにまとめている。

 

hongoh.hatenablog.com

1.資本保全バッファー

資本保全バッファーは、総自己資本比率8%に加えて、さらなるバッファーとして2.5%の積み増しを求めるものである。これは、景気後退時やショック時には取り崩しが可能である。もしこのバッファーが達成できないと、配当や賞与といった社外への資本流出が制限される。

 

なぜこの資本バッファーがプロシクリカリティへの対策となり得るのか。そもそもプロシクリカリティに関して指摘されていたのは、景気後退時の損失の発生等により自己資本比率が低下した際、貸出を減らすことで分母を小さくし、自己資本比率を保とうとすることで、さらに経済は冷え込み、景気悪化が進行する、という懸念であった。

 

この資本保全バッファーを導入することで、利益を保全するインセンティブを与え、自己資本比率の分子である自己資本相当額を十分に確保することで、不景気時にある程度取り崩しても問題ないようにする狙いがある。そうすれば、分母のリスクアセットに含まれる貸出をむやみに減らす必要もなくなり、実体経済に悪影響を与える恐れも小さくなる。

 

2.カウンターシクリカルバッフアー

こちらも資本保全バッファーと同様、自己資本を追加的に積み増すことを求めたものである。具体的には、「与信(銀行の貸出)/GDP比率」が過去からのトレンドを乖離して大きいとき、すなわち景気が過熱しているとき、各国当局の基準で0-2.5%の範囲で設定する。

 

プロシクリカル(景気循環促進的)と対照的に、カウンターシクリカル(景気循環抑制的)である点がポイントである。好景気時に過度な与信行動によりリスクアセットを必要以上に積み上げるのではなく、将来の損失に備えて一定量を蓄えておくインセンティブを金融機関に与えている。

 

 

 

(参考)

みずほ証券バーゼルⅢ研究会『詳解バーゼルⅢによる新国際金融規制』