地銀の収益構造の転換が迫られている。伝統的には地銀の収益源は地域企業への融資が中心であった。しかし、都市部への一極集中や地方における人口減少などの社会構造的な問題による融資先の減少に加え、長らく続く低金利環境による利鞘の縮小で、融資に頼るビジネスモデルに限界が訪れつつある。
「預貸率」という指標がある。これは預金額に占める融資額の割合であるが、この値が100%に近いほど、預金を融資に回しているということになる。この預貸率の推移を見てみると、長期的にみると減少傾向にあり、預金が「余っている」状態であるといえる。
貸出や預金に関する統計については、全国銀行協会の以下のページにまとめられている。
https://www.zenginkyo.or.jp/stats/month1-01/
こうした中、余った預金をそのままにしてもお金は増えないので、株や債券、投資信託などに投資して運用することで、収益を稼ごうという流れに必然的になるだろう。上記のように、融資で収益を稼ぎづらい環境にあるのだから、世界経済の成長の果実を取り込むようにうまく資産に投資ができれば、安定的な収益が期待できる。
しかし、ここで問題となってくるのは、地銀には運用人材が豊富でないということだ。上述の通り長い融資業務が圧倒的に中心であったので、それだけ人材も融資部門に重点的に割り振られてきた。
このため、地銀内部に自己運用をするノウハウが十分に蓄積されていないという現状があるという。こうした地銀に運用コンサルティングを行う業者も登場してきている。
地銀に関しては、複数行の統合による業務効率化が近年注目を集めているが、有価証券運用のノウハウ蓄積も、地銀にとって重要な観点だといえるだろう。