<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

課題だらけの地方銀行-成長か安定か

f:id:hongoh:20210316221444j:plain

多くの地銀が苦境に立たされている。都市部への一極集中や地方における人口減少などの社会構造的な問題による融資先の減少に加え、長らく続く低金利環境による利鞘の縮小で、融資による収益が少なくなってしまっている。

 

しかし、地銀は地域にとっての「インフラ」であり、地域の金融仲介機能を一手に担っている。もし経営の安定が損なわれれば、地域経済に大きな影響を与える。融資先が減少する中で、リスクの高い借り手への融資に手を出してしまう可能性もある。中には新たな収益源を求めてリスクの高い債券に投資している地方銀行もあるが、金融危機が生じた際に資産を大きく資産が棄損しないように留意する必要がある。

 

同時に、地銀は地域経済の成長にとって重要な存在である。地銀が地域企業と寄り添い、資金供給の担い手となることで、地方経済は成り立ってきた。日本の地方においては、都市部への一極集中に伴う人口流出、世界にも類を見ないスピードの高齢化と人口減少という課題を抱えており、地方経済の衰退が懸念されている。政府が「地方創生」を重要な政策課題として掲げる中、地方銀行に期待される役割は大きい。具体的には、バランスシート上の数字のみで融資の可否を判断するのではなく、地域企業と密接な関係を持っている地方銀行が、その企業の特性を踏まえ、事業価値を向上させる形で財務面から支援を行うことが期待される。

 

こうした中で、地方銀行には自らの成長と、金融システムの安定の両立という、難しいかじ取りを迫られることになる。監督当局においても、金融システムやマクロ経済の状況も踏まえて地銀が過度なリスクテイクをしていないかモニタリングすると同時に、各地銀が融資等を通じてその地域の企業の成長をサポートするよう、促していくという難しい対応が求められる。