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大阪堂島商品取引所におけるコメ先物取引廃止について考える

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2021年8月、大阪堂島商品取引所はコメ先物取引の本上場が農林水産省に認可されなかったと発表した。これにより、それまで試験上場が続いていたコメ先物取引が廃止されたことになる。

 

コメ先物取引の歴史

コメ先物取引の歴史は江戸時代に遡る。1730年、江戸幕府公認の堂島コメ市場が大阪に誕生した。その後、1939年、戦時下においてコメ先物取引が停止され、長らく取引は行われなかったが、2011年堂島商取においてコメ先物の試験上場が開始される。期限を数回延長した上での本上場への移行申請が、この度農水省により却下されたという経緯である。

 

そもそも先物とは

そもそも先物取引とは、価格が変動する商品等の将来における売買において、現時点で取引価格を事前に決める取引のことである。上述の通り、日本では江戸時代より、米の取引価格の変動に備えて将来の取引価格をあらかじめ決める取引が行われていた。この取引を行うことで、例えば米の販売者にとっては、収穫時の取引価格が大幅に下落することによる売上高の減少というリスクを防ぐことができた。これが先物取引の原型とされる。

 

今回のコメ先物取引の本上場が期待されていたのは、まさに「先物によって将来の価格を固定できる」という理由からだった。昨今の頻発する異常気象により、農作物の価格安定性はより脆弱なものになっていると考えることができるだろう。こうした中で、先物取引リスクヘッジとして大いに機能しうるものであるはずだった。

 

とりわけ、コメを含む商品(コモディティ)に関する先物を、商品先物という。商品先物については、以下のページでまとめている。

商品先物と現物の受け渡しについて - 金融アトラス

 

コメ先物反対派の主張

一方、先物取引にはリスクヘッジの他にもう一つの側面がある。それは「投機」である。先物取引は「売り」から取引を始めることができたり、少ない元手で多くの額を動かずこと(レバレッジ取引)ができたりと、マーケット参加者のマネーゲームに利用される側面がある(むしろ株式における先物取引に関しては、投機的な取引の方が一般的と言えるかもしれない)。

 

先物価格と現物の価格は連動するため、コメの価格が不安定になるのではないか、という根強い反発があった。こうした声に農水省が配慮したものと考えられる。

 

本来であれば、先物取引導入による現物価格の影響については、実証的な分析により検証されるのが望ましいと個人的には考えるが、今回は先物取引に対する悪いイメージが先行した格好となっている。

 

(参考):

日本経済新聞「コメ先物が廃止へ 農水省、堂島商取の本上場認めず」2021年8月6日