デリバティブを利用した投資手法であるストラドルが、租税回避に使われるという懸念があるという。本ページでは、ストラドルを用いた租税回避についてまとめたい。
ストラドルとは
ストラドルとは、デリバティブ取引の「買い」と「売り」を両建てで取引することをいう。ストラドル取引の概要については、「ストラドルとは何か」のページを参照されたい。
損益通算を利用した租税回避
損益通算とは、利益と損失を相殺し、残った額に対して課税するという手法である。例えば、A株による利益が100、B株による損失が20だったとすると、損益を通算した80に対して課税さるということである。
ストラドル取引により、ある商品について「買い」と「売り」を両建てで取引した後、相場が動くと、当然のことながらどちらかについては損が出て、もう一方は益が出る。例えば日経225が2万から2万2千円になったとき、買い建てについては2千円の益となり、売り建てについては2千円の損となる。このうち、損失のあった方だけを売却することで実現損を発生させ、その他の取引で生じた株式譲渡益と通算すれば、課税額を小さくすることができる。
諸外国においては、こうした租税回避に対する防止策がとられている。例えば米国では、時価評価課税が導入されている。時価評価課税とは、課税年度末に決済されていないデリバティブ取引がある場合は、その時点の時価で決済されたものとして、含み損益を課税対象として認識するものである。
ストラドルによる租税回避に関する議論の背景
こうした議論が日本で行われている背景には、「金融所得課税の一体化」が検討されているためである。2021年時点では、株や債券については損益通算が認められ、これらの取引による金融所得は一体化して課税される。一方で、デリバティブについては他の金融商品との損益通算は認められていない。
今後デリバティブについても損益通算を拡大するにあたり、他の金融商品と損益通算が可能となった時、問題となるのが上記のストラドルによる租税回避の懸念である。あらゆる金融商品について損益通算を認め、「金融所得課税の一体化」を進めるには、こうした租税回避に対する策を講じる必要がある。
(参考):
金融庁「金融所得課税の一体化に関する研究会」(第1回)事務局資料