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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

租税における水平的公平と垂直的公平について

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租税の大原則の一つに「公平性」がある。さらにその中でも、「水平的公平性」「垂直的公平性」の2種類がある。本ページでは、この「租税の公平性」についてまとめたい。

 

水平的公平

水平的公平とは、「同じ租税負担力を有する者には同じ水準の税負担を課すべき」という考え方である。簡単に言えば年収500万円で、資産規模も同じ2人の人がいるとすれば、その2人の租税額は同等であるべき、ということである。至極当たり前のことのように感じられるが、現実は必ずしもこの原則が守られているとは限らない。

 

サラリーマンの所得については、源泉徴収という方式がとられ、原則給与の全てが所得税の対象範囲として補足される。一方、自営業者については、仕事とプライベートの境界がより曖昧であるが故に、一部の支出を「仕事上の経費」とすることで、所得税の対象外とすることができる。一般に、農林水産業の従事者はこの傾向がより顕著と呼ばれ、サラリーマン、自営業者、農林水産業従事者それぞれの課税所得補足率は10・5・3(トーゴーサン)、9・6・4(クロヨン)などと言われている。

 

垂直的公平

こちらは、租税負担能力に応じて、実際の租税負担の程度も変えるべきということである。例えば年収500万円の人と年収3000万円の人がいたとして、どちらも同額の所得税を課せば、年収500万円の人の負担が大きいことは自明だろう。

 

現在の日本の所得税の体系は、この垂直的公平の観点から、「累進課税」に基づいている。つまり、所得が上がれば上がるほど、所得に対する所得税の割合(所得税率)を高く設定している。

 

この累進課税方式は、「所得再分配」の役割も担っている。所得は完全に本人たちの努力のみで決まることはなく、恵まれない環境のせいで所得が低いままになっているケースも多い。そこで、このような累進課税を課し、税収でそうした人たちにも公共サービスを提供すれば、高所得者低所得者の間の格差を埋めることにつながる。

 

しかしながら、累進課税を課し高所得者への所得課税を高くすることで、技術力等の能力の高い人材が海外に流出してしまうという問題もある。事実、金融の分野では、専門性の高いプロフェッショナルが日本に来るインセンティブは必ずしも高くなく、高所得者でも税率の低い香港やシンガポールに集積する傾向が見られる。

 

こうした高技能の人材が流出することや日本に集積しないことは国全体としての生産能力に関わるため、公平性の担保はもちろんのこと、税率の設計にあたっては国際動向をにらむことも同時に必要であると考えられる。