本ページでは、Too-big-to-fail(大きすぎて潰せない)とはどのような概念を意味するのかについてまとめたい。以下、Too-big-to-failをTBTFと略して話を進める。
TBTFとは
ある金融機関について、提供するサービスの規模が大きく、金融システム上重要な役割を担っていると考えられるとき、その金融機関はTBTFであるとみなされる。日本では、メガバンクを想像すればよいだろう。
なぜ大きすぎると“潰せない”のか。大規模で金融システムの中核をなす金融機関が破綻すると、この金融機関と取引のある多くの金融機関において連鎖的に資金繰りの悪化や信用不安が広がり、金融システム全体が機能不全となり、実態経済全体に悪影響を与える恐れがある。そうすると、金融当局は公的資金を投入してでもその金融機関の破綻を回避し、経済の深刻な冷え込みを防ごうとするだろう。これこそが、「大きすぎて潰せない」問題の本質である。その金融機関を潰れることで、経済全体が影響を受けるため、潰すことができないのである。リーマンショック時に公的資金注入によって救済された保険会社のAIGは、この典型である。
TBTFの何が問題か
では、このTBTFの何が問題なのか。自らをTBTFだと自覚している金融機関にとっては、万一破綻の危機に陥った場合でも、どうせ公的機関に援助してもらえるだろう、と考え、高いリスクを取って高いリターンを得ようとするインセンティブがはたらく可能性がある。経済学的にはこのような状態を「モラルハザード」と呼ぶ。要はやりたい放題な状態ということである。
公的資金の注入も無尽蔵にできる訳ではなく、国民の反発も必至である。政府にとっても、なるべく公的資金の注入を避けたいのは間違いない。
こうしたことが起こらないよう、金融安定理事会(Financial Sta-bility Board:FSB)といったグローバルな金融当局において解決策が議論され、国際的な規制の導入や、各国当局によるモニタリング等が行われている。
FSBによって、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBsという)のリストが公表されており、このリストにある金融機関はTBTFであるとして、追加の規制が導入されている。
三谷明彦(2010)「Too big to fail 問題と金融規制」みずほ総研論集2010年Ⅱ号