<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

トレーダーの社会的意義、金融システムにおける役割について

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日々短期的な利益を求めて株などの金融商品を売買するトレーダー。その個々人の動機は専ら「1円でも多く儲ける」ということである。しかし、これを俯瞰で見て、トレーダーには社会的にどのような意義があるのか、そして金融システムにおいてどのような役割を担っているのだろうか。本ページでは、一般的に考えられているトレーダーの社会的な役割について、教科書的にはなるが、まとめてみたい。

 

流動性の供給

まず挙げられるのが、「流動性の供給」機能である。個々のトレーダーが、各々の利益を求めて様々な銘柄を取引する結果、マーケット全体として流動性が生まれる。つまり、「いつでも好きなタイミングで、任意の銘柄を売ったり買ったりできる」ということである。

 

こうした環境が出来上がると、沢山の人がマーケットに参加し、資金を投下する。そうすると、その地域の企業に多くの資金が流れることとなり、企業の経済活動は活発化する。これによってそのマーケットの収益機会が増えると、さらにマーケット参加者が増え、好循環が出来上がっていく。

 

流動性は、マーケットが円滑に機能するための基礎となる。

 

公正な価格形成機能

ある銘柄の価格は、マーケットにおける需給で決定される。ではマーケットの参加者は何に基づいてその銘柄を需要するのかと言えば、その銘柄の業績が良く、今後も成長が期待できるのかどうか、という、いわば「企業の実力」がポイントとなる。

 

マーケットの参加者が多ければ、こうした企業の実力に基づいた需給が正しく価格に反映されることになる。

 

しかし、マーケットの参加者が少ないと、本当は業績が良く成長が見込まれる企業が「発見」されず、価格が安いまま放置されてしまうおそれがある。そうすると、成長企業に資金が流れず、経済の発展が阻害されるおそれがある。

 

個々のトレーダーは「世の中を良くしたい!」と考えて行動することはないだろう。むしろいかに自分の利益を高められるかに注力するはずである。しかし、そのトレーダーたちが多数集まり、流動性が増してくると、適切な価格形成が行われて、真に必要なところに資金が流れていくことになる。

 

まさにアダムスミスの「神の見えざる手」と同じような構造を見てとることができる。