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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

オンラインカジノを利用したマネーロンダリングについて

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本ページでは、オンラインカジノを利用したマネーロンダリングについてまとめたい。

 

マネロンの基本的な考え方

マネーロンダリングとは日本語に訳せば「資金洗浄」である。麻薬取引などの非合法の手段で手に入れた「汚れたお金」を、合法的な(ように見える)「綺麗なお金」に変えることを意味する。

 

例えば麻薬取引などで大金を手にしたとき、それが麻薬取引によって手にしたお金だと気付かれないようにする必要がある。これこそがマネーロンダリングの本質であり、「綺麗なお金」に変えるということの意味である。

 

ここで、カジノがマネロンの舞台となることがある。

 

資金の出所を分かりづらくする

マネロンで重要なことは、その資金がどこから来たのかを分かりづらくすることである。そのための一つの手法として、金券や金融商品、あるいは車などの現物といった換金性の高い商品を汚れたお金で一旦購入し、すぐに売却するなどを繰り返す、というものがある。

 

そして、カジノも資金の出所を分かりにくくするために頻繁に利用される。まず、ギャンブル用の口座に多額の資金を預ける。そして、怪しまれないよう多少のギャンブルを行ったあと(全額を賭ける必要はない)、口座全体を空にしてしまうのである。具体的には、ギャンブル用の口座から、(入金した時とは別の)銀行口座に移し替えることで、資金の移動が追跡しづらくなる。

 

ギャンブル用の口座、銀行口座共に複数用意していればさらに追跡が難しくなる。一度に多額の入金があれば怪しまれそうだが、小口に分け、複数の口座に分散して入金すれば、怪しまれることも少なくなる。

 

オンラインカジノの場合、世界中どこにいても取引が可能であり、実質的に海外送金が可能となってしまい、ますますマネロンが容易な状況となっている。

 

非合法なオンラインカジノ

アメリカのFBIも、認可されたオンラインカジノであってもマネロンの潜在的な危険は残っているという認識を示しているとの報告もある。

 

さらに、認可のないオンラインカジノが規制・監視の目をかいくぐって多数立ち上げられている。

 

日本では、そもそも賭博は禁止されているので日本の業者がオンラインカジノを運営することはできないが、日本にいる個人が海外のオンラインカジノを使用することについては、グレーゾーン的な状態になっているのが実情である。

 

(出典):

How Money Laundering Really Works & Why It's A Problem In The Gambling Industry - Casino.org Blog

 

 

デビット、キャッシュ、プリペイド、クレジット…カードの機能の違いについて

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本ページでは、クレジットカード、デビットカード、キャッシュカード、プリペイドカード、カードローンの違いについてまとめたい。

 

クレジットカード

クレジットカードは、利用者の「信用」に基づき、商品・サービスの代金を支払った段階では引き落とされず、翌月以降の定められた支払日に引き落とされる。銀行口座と紐付いており、支払日に銀行口座から引き落とされる。よって、買い物時に必要な額が揃っていなくても買い物が可能である。しかし、利用者が一定の信用に足る必要があるため、カードの使用開始前に年収や資産等の審査があり、利用枠(買い物できる額)もあらかじめ決まっている。現金の借り入れができるキャッシング機能がついたものもある。

 

デビットカード

クレジットカードと似ており、キャッシュレシュでの決済が可能であるが、引き落としまでタイムラグのあるクレジットカードとは異なり、カードを利用すると同時に、口座から代金が引き落とされる。よって、個人の「信用」には依拠しないため、基本的にカードの利用開始にあたって審査は必要ない。口座を管理する銀行が発行するケースが多い。

 

キャッシュカード

口座にあるお金をATM等を通じて現金として引き落とす(出金)ためのカード。デビットカードの機能がついたものもある。

 

プリペイドカード

事前にカードに入金し、その範囲内での買い物が可能である。上記の3つと違い、銀行口座と紐付いていない。日本では交通系ICカード(PASMOなど)が代表的。法律的には「前払式支払手段」と呼ばれる。

 

カードローン

カードローンは、文字通りカードを通じてローン(借入れ)を受けられるサービスであり、カード会社や銀行金融機関が提供している。ATMや銀行などで現金を引き出したり、ネットから自分の口座へ振込むなどの方法がある。クレジットカードのキャッシング機能と類似しているが、カードローンは一般に金利がより低めに設定されており、かつ利用限度額も大きい場合が多い。

 

(参考):

デビットカードとは?クレジットカードとの違いや上手な使い方を解説|mycard|三菱UFJニコス

カードローンとは?種類やしくみ、使い方、お申し込みの流れについて|ローンノート

ブロックチェーンは「信用のあり方」を変える

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ブロックチェーンと聞くと、「仮想通貨」で用いられる技術、とイメージする人が多いかもしれない。確かにそれは一つの側面ではあるが、ブロックチェーンはこれまで当たり前であった「信用」の在り方を大きく変える存在となるかもしれない。

 

これまで、社会のあらゆる場面で「信用」の付与は極めて重要な要素であった。例えば財取引を行う際に使う紙幣は、いわばただの紙切れである。なぜこの紙切れによってどこに行っても取引が成り立つかというと、人々は皆この紙幣を「信用」しているからである。そしてこの「信用」は、国家という権力がこの紙切れにお墨付きを与えることによってもたらされている。

 

クレジットカードによって、商品の購入時よりも支払いのタイミングを遅らせることができるのは、カードの保有者がきちんと支払いを履行するということが「信用」されているからであるが、なぜ「信用」されているかと言えば、カード会社がカード保有者の資産状況等を審査することにより、お墨付きを与えているためである。

 

このように、「信用」は社外経済活動において重要な要素を占めているが、これは従来国や大企業などの「権威」が社会経済活動の間に入って、「信用」のお墨付きを与えることによって成立していると言える。

 

ここで、ブロックチェーンはこの「信用」の在り方を大きく変える可能性を持つ。ブロックチェーンを通じて行われた取引は、国や企業といった権威によってではなく、見知らぬ人の「マイニング」という行為によってお墨付きを与えられる。マイニングをする動機は、その行為によって報酬(暗号資産)を得ることができるためである。この仕組みを「プルーフオブワーク(Proof of Work)」という。他にも信用付与の形態は存在するが、いずれも非中央集権的である点は共通している。

 

つまり、信用の付与を、中央の権威によってではなく、個人の利己的な行為によって行おうという思想がブロックチェーンの根幹である。この非中央集権的な仕組みが社会経済活動のあらゆる側面にまで広まれば、既存の政府や、大企業の在り方を大きく変える可能性を持つ。

ファーマ-フレンチの3ファクターモデルとは何か

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本ページでは、ファーマ-フレンチの3ファクターモデルとは何かについてまとめたい。ファーマ-フレンチの3ファクターモデルとは、一言でいえば、ある資産のリターンを、マーケット全体(市場ポートフォリオ)のリスクプレミアム、時価総額、簿価時価比率の3つの要素(ファクター)で説明するモデルである。

 

資産の期待収益率に関するモデルで有名なものにCAPMがある。CAPMとは、ある資産の収益率は、市場ポートフォリオのリスクプレミアム(安全資産の収益率との差)と線形(一次関数)の関係にあることを示している。そして、ファーマ-フレンチの3ファクターモデルは、これに加えて時価総額、簿価時価比率の2つを加えて資産の期待収益率を説明するモデルと言える。

 

CAPMについては以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

資産iについてのファーマ-フレンチ3ファクターモデルの数式は以下の通りである。

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ここで、

E(Ri)・・・資産iの期待収益率

R_f・・・リスクフリーレート

RP_m・・・市場ポートフォリオのリスクプレミアム

F_SMB・・・時価総額ファクター

F_HML・・・簿価時価比率ファクター

β_im、β_iSMB、β_iHML・・・それぞれのファクターに対する感応度

 

時価総額ファクターは、市場における企業を時価総額の上位半分と下位半分に分け、両者それぞれの平均リターンの差をとったもの(small minus bigでSMB)、簿価時価比率ファクターは、市場における企業を簿価時価比率の上位、中位、下位に区分し、上位と下位それぞれの平均リターンの差をとったもの(high minus lowでHML)となる。

 

時価総額について、もし上記のF_SMBがプラスであれば、小型株が強い相場であるということができる。

 

簿価時価比率は、その名の通り企業の株式の時価と簿価(バランスシート上の純資産に相当)の比率である。株価純資産倍率(PBR)の逆数ということもできる。簿価の方が、市場取引によって変動する時価よりも大きければ、市場参加者によってその企業の株は「割安」と判断されているということになる。もし上記のF_HMLがプラスであれば、その相場は割安株の相場(バリュー相場)といえる。

 

そしてそれぞれのファクターの係数であるβは、「ファクターに対する感応度」を示している。割安株相場に対する感応度、小型株相場に対する感応度は、個別資産によって異なり、ある資産のβが大きければ、それだけこれらのファクターに強く反応して期待収益率が変動することを意味する。

 

 

(参考):

Fama, E. F., & French, K. R. (1993). Common risk factors in the returns on stocks and bonds. Journal of financial economics, 33(1), 3-56.

 

内部TLACとは何か

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本ページでは、内部TLACとは何かについてまとめたい。そもそもTLACとは何かについては以下の2つの記事を参考にされたい。

hongoh.hatenablog.com

hongoh.hatenablog.com

内部TLACとは

G-SIBに指定されている金融機関の多くはグローバルにビジネスを行い、複数の国に拠点(海外子会社)を持つ。こうしたG-SIBに求められているTLACであるが、それぞれの国で一定程度のプレゼンスを持つ海外子会社(重要な子会社グループ)については、G-SIBの持株会社TLACで確保した損失吸収力を分配する必要があり、これを「内部TLAC」という。

 

これは、G-SIBの拠点としている各国においても損失吸収力を分配することを保証することで、各国当局がG-SIBの資産を自国に囲い込むことを防ぐ狙いがある(自国で活動するG-SIBの海外拠点が破綻してしまうことで、自国の金融システムが機能不全に陥ってしまってはたまったものではない!)。

 

内部TLAC分配のイメージ

内部TLACの分配イメージは以下の図に示した。

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具体的には、子会社に対する出資や貸付を行うことで、グループとして確保した損失吸収力であるTLACを海外子会社にも分配する。内部TLACの所要水準は、仮に海外子会社が破綻処理の対象であった場合に必要となるTLACの所要水準の75%~90%の間で定められる。

内部TLACの適用対象

「重要な子会社グループ」が内部TLACの適用対象であるが、具体的には、リスク・アセット、業務収益、レバレッジ比率におけるエクスポージャーのいずれかがグループ連結比5%を超える場合が基本的には対象となる。

 

(参考):

みずほ総合研究所(2015)『国際金融規制と銀行経営 ビジネスモデルの大転換』

吉井一洋、金本悠希、小林章子、藤野大輝(2019)『詳説 バーゼル規制の実務 バーゼルⅢ最終化で変わる金融規制』

 

 

「貯蓄から投資」の目的とは?

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日本において「貯蓄から投資」が叫ばれて久しい。かつての銀行中心の金融システムから、市場型の金融システムへの転換を図る目的で90年代後半から提唱されたスローガンであるが、具体的に「貯蓄から投資」を通じてどのようなことが期待されていたのか。

 

○家計側からの視点: 金融所得の拡大

「貯蓄から投資」の家計側から見たメリットは、金融所得の拡大である。預金に預ければ数%の利息がつく時代とは異なり、長引く低金利環境の中で、預金だけでは資産がいっこうに増えない。また、少子高齢化が進む中で、将来の年金受給も不確実性が大きい。こうした中、労働所得のみに頼るのではなく、長期積立分散投資によりリスクを軽減しながら預金以外の資産に投資をすることで金融所得を得ることが推奨された。NISAやiDeCoといった制度は、その帰結であるということができる。

 

○企業側からの視点: 資金調達手段の多様化、リスクマネー供給の活性化

企業側から見たメリットについて見てみたい。まず、初歩的な経済学の教科書に必ず出てくる「生産関数」という概念がある。一国の生産量(GDP)は、資本投入量、労働投入量、そして全要素生産性(いわゆる技術進歩と解釈できる)によって決定される、というものだ。


その国で生産活動を行う企業において、 以上の3要素が上昇すれば、ひいては国全体が成長できることになる。


日本の高度経済成長時は、継続した人口増加に伴う労働投入量の増加、多額の設備投資による資本投入量の増加が、企業の成長の鍵であった。このようなフェーズにおいては、銀行を中心とした金融システムが効果的に機能する。


将来の成長の見込みがある企業に対して銀行が融資をし、企業はそれを受けて設備投資や人員の増加を実施し、着実に事業規模を増加させていく。 銀行は過度なリスクテイクに陥ることなく、着実に収益をあげることができる。
 
しかしながら、経済が成熟し、成長率がフラットになり、人口減少が続く昨今においては、資本蓄積や労働投入を増やしていくのは容易ではない。 こうした段階において、経済成長の重要な要素となるのは技術進歩、さらに言えばイノベーションである。


そのため、イノベーションを起こす企業にお金が集まる環境が整備されることが重要であるが、銀行がこの担い手になるのはハードルが高い。銀行からの借入金は、基本的には将来必ず返さなければならない。ただし、企業が将来確実に顕著な技術革新を達成できるかどうかは不透明であり、 どの企業が技術革新を成し遂げられるかを予測するのは難しい。


このように、「将来うまくいけば大成功となるけれども、うまくいかない場合もある」といった企業に貸し出しを行うの銀行にとってはリスクである。こうしたいわゆる「リスクマネー」の供給の担い手は、銀行ではなくマーケットを通じて株式等に投資する投資家である。具体的には、大規模な資産運用会社・機関投資家や、ベンチャーキャピタルプライベートエクイティなどである。

 
成熟した経済において経済成長を実現させるには、イノベーションが不可欠であり、そのためには市場を通じて投資家が直接投資先を決定する「 直接金融」の仕組みの方が適していると考えることができる。そのため、国全体として市場型金融の比率を高めよう、というのがもう一つの目的であるといえる。

 

 

「貯蓄から投資」というスローガンは、家計・企業双方への波及効果を想定したものと考えることができる。

 

誤方向リスク(Wrong Way Risk)とは何か

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本ページでは、誤方向リスク(Wrong Way Risk)とは何かについてまとめたい。誤方向リスクとは、一言でいえば、デリバティブ取引において、エクスポージャーの増大に伴って取引相手の信用力が悪化し(カウンターパーティリスクの増大)、想定される損失が大きくなることである。言い換えれば、エクスポージャーとカウンターパーティの信用力との間に負の相関関係があるときに、誤方向リスクは発生する。

 

デリバティブにおけるエクスポージャー

まず、デリバティブ取引における「エクスポージャー」とは何か。

 

デリバティブにおける時価は、将来に発生するキャッシュフローを無リスク金利で現在価値に割り引いたものである。この将来キャッシュフローは価格の変動のリスクに「さらされている 」ため、「エクスポージャー」と呼ばれる。

 

株などの他の資産は保有額そのものが価格変動のリスクにさらされているためエクスポージャーと呼ばれるが、デリバティブは差金決済による取引であり、将来キャッシュフローエクスポージャーとなる。

 

カウンターパーティリスクとは

デリバティブにおいては、取引相手(カウンターパーティ)が将来時点で取引を履行してくれるという「信用」に基づいている。 カウンターパーティリスクとは、カウンターパーティとの間のデリ バティブ取引等によるキャッシュフローが正である場合、このカウンターパーティが破綻したときに、正の価値の金額を取り損なってしまうリスク(信用リスク)である。

 

カウンターパーティリスクの概要については以下でもまとめているので、あわせて参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

エクスポージャーとカウンターパーティの信用力の間に負の相関がある場合(誤方向リスクの具体例)

前置きが長くなったが、誤方向リスクとは、デリバティブ取引において、エクスポージャーの増大に伴ってカウンターパーティの信用力が悪化し、想定される損失が大きくなることであった。それでは、どういった取引の際に負の相関は発生するのだろうか。

 

スワップ取引において、金融機関が固定額のキャッシュフローを受け取り、原油価格に連動した支払いを原油生産者に対して行う場合。原油価格が下がるとき、金融機関は支払い額が小さくなるので取引によるエクスポージャーは大きくなる一方、カウンターパーティである原油業者の業績は悪化する。よって、エクスポージャーとカウンターパーティの信用力との間に負の相関が見られる例ということができる。

 

 

(参考):富安弘毅(2014)『カウンターパーティリスクマネジメント』