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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

法律の条・項・号について

本ページでは、法律の条・項・号の区別についてまとめたい。

 

早速、実際の条文で確認してみたい。以下は金商法の抜粋である。

第二条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。
一 国債証券
二 地方債証券
三 特別の法律により法人の発行する債券(次号及び第十一号に掲げるものを除く。)
四 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)に規定する特定社債

(中略)

2 前項第一号から第十五号までに掲げる有価証券、(中略)は、有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されていない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし、(中略)次に掲げる権利は、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして、この法律の規定を適用する。
一 信託の受益権(中略)
二 外国の者に対する権利で前号に掲げる権利の性質を有するもの(中略)

(中略)

第二条の二 暗号資産は、前条第二項第五号の金銭、同条第八項第一号の売買に係る金銭その他政令で定める規定の金銭又は当該規定の取引に係る 金銭とみなして、この法律(これに基づく命令を含む。) の規定を適用する。

 

「条」が最も基本的な一つのまとまりとなる。中には、上記のように、「第二条の二」というように、同じ条の中でも複数に分かれていることがある。

 

条の中に、複数のパラグラフ(段落)があり、段落の最初には算用数字が付されている。このまとまりは「項」と呼び、「2」とあれば、それは第2項である。注意が必要なのは、第1項は「1」が省略されており、算用数字が付されているのは2以降である。

 

漢数字で「一、二、…」と列挙されているのは「号」であり、「一号、二号、…」と呼ぶ。

 

ストレステストとは何か

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金融の分野における「ストレステスト」は、様々な目的・手法・範囲を含んでおり、一概に画一的な説明が困難である。さらに、民間の金融機関が行うのか、中央銀行などの当局が行うのかによっても大きく内容は異なってくる。

 

しかし、あえて強引に一般化すれば、ストレスシナリオ(市場の急変など)を設定し、これによってリスク要因が大きく動いたときに、関心のある指標にどのような影響を与えるか、をシミュレーションしたものといえるだろう。

 

民間の金融機関が行うストレステストの主要な目的は、リスク管理(と規制対応)ということになる。金融機関は、貸出や有価証券などを保有し(エクスポージャー)、リスクテイクを行うことでリターンを追求している。市場の急変によりリスクファクター(金利、為替など)が動いたときに、各エクスポージャーにどのように作用するのか、どれほどの損失が予測されるのかをシミュレーションする。よって、リスクファクターとエクスポージャーにどのような関係があるのか、過去のデータをもとに実証的に分析することが必要となる。

 

一方、監督当局が行うストレステストの主要な目的の一つは「マクロプルーデンス政策」である。マクロ経済環境が急変したときに、金融システム全体にどのような影響が及ぼされるかについて分析することが主な目的となる。どのようなモデルが用いられるかは各国当局によって異なるが、日銀で行われているモデルについての説明資料は文末の参考文献に示している。

 

リスクファクターが変動した時に、個別金融機関の自己資本比率がどう変化するか、また、与信行動がどのように変化し、そしてその変化が実態経済にどう影響するか(例えば「貸し渋り」による投資の停滞など)をシミュレーションすることで、ストレス時の金融システムの健全性と実体経済への影響を分析することができる。分析にあたっては、家計や企業、金融セクター等からなるマクロ経済モデルを構築することになる。

 

 

(参考):

Drehmann(2008) “Stress Tests: Objectives, Challenges and Modelling Choices”, Riksbank Economic Review

バーゼル銀行監督委員会(2009)「健全なストレス・テスト実務及び その監督のための諸原則」

日本銀行(2020)「金融マクロ計量モデル(FMM)の概要と近年の改良点」

Bank Stress Test - Overview, Types, and Importance

最終指定親会社とは何か

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本ページでは、最終指定親会社とは何かについて、金商法の条文を見ながら確認していきたい。

 

金商法上の規定

最終指定親会社についての規定は、金商法第五十七条の十二に定められている。

 

まず、「指定親会社」とは何か、から見ていこう。

第二款 指定親会社
(指定等)
第五十七条の十二 内閣総理大臣は、特別金融商品取引業の親会社(第五十七条の二 第八項に規定する親会社をいう。以下この節において同じ。)又はその子法人等が次に掲げる要件のいずれかに該当する場合において 、当該親会社及びその子法人等の業務の健全かつ適切な運営を確保することが公益又は投資者保護のため特に必要であると認められるときは、当該親会社をこの款の規定の適用を受ける者として指定するものとする。

(以下略)

※原文に下線を追加

 

ここで、「特別金融商品取引業者」とは、平たく言えば総資産額が一定の規模を超える第一種金商業者で、内閣総理大臣に届出を行った者である。

 

下線部の通り、特定金融商品取引業者の親会社や子会社等が、業務の健全かつ適切な運営を確保することが公益又は投資者保護に必要であるとされた場合、その親会社は「指定親会社」と認定される。

 

そして、「最終指定親会社」についての言及は以下のとおりである。

3 内閣総理大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、書面により、その旨並びに当該指定に係る特別金融商品取引業者(以下「 対象特別金融商品取引業者」という。)の商号及び当該指定を受けた者(以下「指定親会社」という。)が最終指定親会社( 指定親会社であつて、その親会社のうちに当該指定親会社と同一の対象特別金融商品取引業者に係る指定親会社である会社がないものをいう。以下この款において同じ。)であるか否かの別を当該指定親会社に通知しなければならない。これらの事項に変更があつたときも、同様とする。

※原文に下線を追加

 

要するに、指定親会社の頂点に位置するもの、が最終指定親会社であるということになる。野村證券を例にあげると、野村證券の親会社である持株会社の「野村ホールディングス」が、最終指定親会社ということになる。

 

最終指定親会社に対する規制

最終指定親会社は、最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として、最終親会社及びその子法人等保有する資産等に照らし、自己資本の充実の状況が適当であるかどうかの基準その他の経営の健全性の状況を表示する基準を定めることとされている(金商法五十七条の十七第1項)。これは、要するにバーゼル合意に基づく自己資本比率規制の適用を求めているということである。ここでは、最終指定親会社、その子法人等も含めたグループ全体の連結ベースであるという点がポイントである。

 

※証券会社単体でも自己資本規制がかかっている(固定化されていない自己資本の額 ÷リスク相当額が120%以上。金商法第四十六条の六第 2 項)。しかしこれは、バーゼル合意に基づく自己資本比率とは計算方法が異なる。証券単体の自己資本規制比率については以下の日本取引所グループのページを参照。

 

 

(参考):

総合取引参加者の自己資本規制比率 | 日本取引所グループ

金融庁(2010)「金融商品取引法等の一部を改正する法律案に係る説明資料」

 

 

カレントエクスポージャーとポテンシャルフューチャーエクスポ―ジャーとは

 

本ページでは、デリバティブ取引におけるカレントエクスポージャー(CE)とポテンシャルフューチャーエクスポージャー(PFE)の考え方についてまとめたい。

 

デリバティブ時価

そもそもデリバティブにおける時価とは、将来に発生するキャッシュフローを無リスク金利で現在価値に割り引いたものである。


この将来キャッシュフローは額の変動のリスクに「さらされている 」ため、「エクスポージャー」と呼ばれる。

 

株などの他の資産は保有額そのものが価格変動のリスクにさらされているためエクスポージャーと呼ばれるが、デリバティブは差金決済による取引であり、将来キャッシュフローエクスポージャーとなる。

 

デリバティブにおけるエクスポージャーの基本的な考え方は以下のページでもまとめている。

hongoh.hatenablog.com

 

カレントエクスポージャー(CE)

カレントエクスポージャー(CE)とは、現時点でのデリバティブ取引によって生じているエクスポージャーである。A社がB社とデリバティブ取引を行っており、30万円のプラスのポジションが生じていたとする。もしこの時点でB社がデフォルトした場合、この30万円を得ることができなくなってしまうという意味で、A社は、B社に対して信用リスクを抱えているといえる。CEは、現時点でA社が抱えているB社の信用リスクということもできる。また、CEは再構築コストと呼ばれることもある。

 

ポテンシャルフューチャーエクスポージャー(PFE)

ポテンシャルフューチャーエクスポージャー(PFE)とは、将来のデリバティブ時価の変動も考慮したエクスポージャーである。

 

現時点でのエクスポージャーはCEで把握できたとしても、取引の満期までエクスポージャーは刻々と変化していく。取引期間中において、一定の信頼水準の下での最大のエクスポージャーを推定したものが、PFEである。

 

推定にあたっては、リスクファクター(金利スワップであれば金利)の変動のシミュレーションから将来のエクスポージャーの確率分布を推定する。信頼区間を95%に設定した場合、確率分布における95%信頼区間の下での最大のエクスポージャーを求めることでPFEを算出することができる。リスク管理におけるリミット設定にしばしば用いられる。

 

(出典):

三菱UFJ銀行 市場企画部/金融市場部(2013)「デリバティブ取引のすべて 変貌する市場への対応」きんざい

 

 

オプションの非線形リスクとは?



オプションには「非線形リスク」があるというが、非線形なリスクとはいったいどのようなものなのだろうか。

 

ある金融商品の価格を変動させる要因をリスクファクターという。リスクファクターの変化に対して、商品価格が非線形に動くとき、これを非線形リスク(ガンマリスク)という。反対に、線形のリスクをデルタリスクという。

 

通常の金融商品であれば、リスクファクターの変動による商品価格の変化は線形近似(微分)、すなわちデルタリスクの捕捉のみで事足りることが多い。 

 

一方、オプション商品は非線形リスクを持つ典型例である。商品価格関数を線形近似してデルタを捕捉することに加え、リスクファクターの変動による"デルタ"の変動、つまりガンマの捕捉が必要となる。ガンマは、言い換えれば、価格関数をテイラー展開したときの2次以降の項の値ということも可能である。

 

さらに、オプション価格(プレミアム)は、①価格の変動率(ボラティリティ)②万期までの時間に依存する。

 

つまり、①,②が変動したとき、プレミアムも変動することを意味する。ここで、①ボラティリティの変化に対するプレミアムの変化率をベガ、②時間の経過に伴うプレミアムの変化率をセータという。

 

オプション取引におけるリスク管理には、これらデルタ(Δ)、ガンマ(Γ)、ベガ(v)、セータ(Θ)の捕捉が必要となる。これらのリスク指標測定のための指標をグリークスという。

 

具体的にオプション価格(プレミアム)がどのように動くかは、例えば以下のページを参照。リスクファクターと価格の関係を示したグラフを通じて、価格がリスクファクターの変動により非線形に動いており、従ってデルタ(一階微分、接線の傾き)の値もリスクファクターの変化によって変動すること(この変動の仕方がガンマ)を視覚的に確認できる。

 

オプション取引について | 日本取引所グループ

 

(参考):

小田信之(1996)「非線形なフィナンシャル・リスクの定量化について」日本銀行金融研究所

三菱UFJ銀行(2014)「デリバティブ取引のすべて 変貌する市場への対応」きんざい

金融におけるテイラー展開―非線形な価格の動きを捉える―



テイラー展開の概要

テイラー展開とは、ある関数を2次式以上の多項式で近似することである。

 

微分は、ある関数を1次関数で近似すること(線形近似)であった。y=f(x)のx=aにおける線形近似は、x=a、y=f(a)を通り、傾きf'(a)の直線ということになる。いわゆる"微分"として計算するとき、計算された微分係数は、n次式の関数の場合はn−1次式で表され、そこにx座標(ここではa)を与えてあげれば、具体的な数値として算出される。

 

テイラー展開は、x=aまわりにおける2次以上の多項式を用いた近似を行うことで、その精度を高めることを目指したものと言うことができる。テイラー展開によるx=aまわりの2次近似の式は以下のように表せる。

コンベクシティ

金融分野におけるテイラー展開の使用例として、例えば債券のコンベクシティがある。債券運用において、現在の利回り(例えばr)からわずかに上昇したときに債券価格がどの程度反応するかは非常に重要な指標であり、これをデュレーションという。デュレーションは、いわば価格関数の線形近似であり、接線の傾きをイメージすれば良い。

 

利回りの変化が大きくないうちは、線形近似で問題ないが、利回りの変化幅が大きくなると、実際の価格変化とズレが生じてしまう。よって、テイラー展開を行い、利子率rの周りの価格関数の2次近似を行うことで利回りの変化に対する感応度をより精緻に近似することが可能となる。コンベクシティは2次の項の係数にあたる。

 

オプションの非線形リスク

ある金融商品の価格を変動させる要因をリスクファクターという。リスクファクターの変化に対して、商品価格が非線形に動くとき、これを非線形リスク(ガンマリスク)という。反対に、線形のリスクをデルタリスクという。

 

非線形リスクが存在するとき、価格関数をテイラー展開したときに、2次以降の項の値が無視できない規模になっていることを意味する。オプション商品が非線形リスクを持つ典型例である。具体的にオプション価格(プレミアム)がどのように動くかは、例えば以下のページを参照。理論的には、ブラックショールズ方程式によってオプション価格を算出することができる。

 オプション取引について | 日本取引所グループ

 

(参考):

小田信之(1996)「非線形なフィナンシャル・リスクの定量化について」日本銀行金融研究所

服部孝洋(2020)「コンベクシティ入門―日本国債における価格と金利非線形性―」財務総合政策研究所

尾山大輔、安田洋佑(2013)「[改訂版]経済学で出る数学高校数学からきちんと攻める」日本評論社

 

 

 

 

固定効果と変量効果について平たく説明

 

本ページでは、固定効果モデルと変量効果モデルの概要についてまとめたい。厳密なモデルの詳細や数式については、参考書等を参照されたい。

 

これらは、パネルデータを用いた実証分析の手法である。

 

パネルデータ

パネルデータとは、個人や地域、企業のデータを複数時点で観測したものである。クロスセクションデータと時系列データを組み合わせたものということもできる。

 

パネルデータの最大の利点は「情報量の多さ」である。サンプル数100の標本について、10年分のデータが取れるとしたら、100×10=1000のデータを得られることになる。

 

パネルデータを使うことで、観測対象について、施策の前後の変化を検証することが可能となる。パネルデータを用いた分析に「差の差の分析」などがある。

 

また、後述するように、固定効果を制御することが可能となる。

 

固定効果

固定効果とは、一言でいえば、「時間を通じて一定な個人特有の効果」ということができる。例えば、生まれ持った個人の能力や才能は、学力や年収などの諸要素に影響を与え得るが、具体的なデータとして計測することは困難である。

 

この固定効果はデータとして観測不能なので、回帰分析の中で説明変数として用いることはできない。そうすると、固定効果は「誤差項」に含まれるということになる。

 

誤差項が説明変数と相関しているとすると、正しく推定ができなくなってしまう。

例えば年収(被説明変数)と学歴(説明変数)の関係を推定するときに、誤差項に含まれる個人の能力が学歴と相関するということは容易に考えられる(個人の能力が高い方が学歴が高くなるという傾向)。

 

パネルデータであれば、この「固定効果」を制御することが可能である。やり方の一つとして、1期前のデータとの階差をとるという方法がある。固定効果は時間を通じて一定とされているので、階差をとることで固定効果を除去できることが期待される。

 

もう一つの方法は、平均差分法と呼ばれ、説明変数、被説明変数の時間平均を推定モデルから差し引くことで、固定効果を除去する方法である。

 

階差分法や平均差分法により固定効果を除去する推定方法を固定効果モデルという。

 

変量効果

変量効果も、時間を通じて変化しない個別の効果であるが、固定効果との違いは、説明変数と相関していないという点である。説明変数と相関していない個別の効果を変量効果と呼んでいる。

 

時間を通じて変化しない個別の効果が固定効果なのか変量効果なのか判別するには、ハウスマン検定と呼ばれる検定手法により確かめることができる。固定効果モデルと変量効果モデルそれぞれで回帰分析をしたときの推定値の差に着目して、その差が大きければ、時間を通じて変化しない個別の効果は説明変数と相関している、つまり固定効果であると結論付けることができる。

 

(参考):

田中隆一(2019)「計量経済学の第一歩」有斐閣ストゥデイア