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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ランダム化比較実験(RCT)とは何か

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本ページでは、ランダム化比較実験(RCT: Randomized Controlled Trial)の考え方についてまとめたい。

 

因果関係をどう捉えるか

ランダム化比較実験の基本的な目的は、因果関係を特定することにある。例えば灌漑施設の建設が経済発展にどのような効果をもたらすか、という調査課題があったときに、灌漑施設の建設が原因、経済発展が結果ということにかる。

 

単純に灌漑施設建設の前後でその地域のGDPを比較すれば良いじゃないか、と思われるかもしれないが、経済発展に影響を与える変数は他にもたくさんある。国の金融政策かもしれないし、人口の成長率かもしれない。社会は様々な変数が複雑に絡まっているため、GDPの成長が、本当に灌漑施設建設によってもたらされたのか、単純にデータの推移を追うだけでは分からない。

 

ランダム化比較実験の考え方

そこで、ランダム化比較実験では、灌漑施設建設以外の諸変数をコントロールするために、"処置群(処理群)"と"対照群"の二つのグループを導入する。

 

処置群の地域では灌漑施設を建設する。対照群の地域では建設しない。そして、処置群と対照群の間で、灌漑建設の有無以外の諸条件が均等になるようにする(例えば人口、平均世帯年収など、経済成長に影響を与えうる変数)。実験において被験者を処置群と対照群に割り当てるとき、ランダムに両者を割り当てることによって諸変数をコントロールすることをrandom assignmentという。

 

こうすることによって、両者で仮に経済成長の度合いに差が生まれた場合、この原因が灌漑施設の建設によるものと推察することができる(他の条件は揃えているので)。上記の手続きにより、因果関係を特定できる環境が整っていることを、内的妥当性があるという。

 

ここで、この処置群と対照群の比較による結果を、他にも一般化してあてはめることができるのかという問題がある。これを担保するためには、恣意的にサンプルを抽出するのではなく、ランダムに抽出するようにし、偏りが発生しないようにする必要がある(random sampling)。このようにして一般性を担保できる状態になっていることを外的妥当性があるという。

 

マクロデータの場合

以上のランダム化比較実験は、実験者が内的妥当性と外的妥当性を担保するために、ランダムにデータを抽出したり処置群と対照群にデータをランダムに振り分けるなど、コントロールが可能であった。

 

しかし、実験データではなく、マクロ変数のような観察データの場合は、こうしたコントロールが困難である。よって、因果関係を特定するための新たなツールが必要となる。回帰分析は、こうしたデータを扱う場合の強力な手法となりうる。