<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ダミー変数×説明変数による交差項の利用について

本ページでは、回帰分析における交差項の利用についてまとめたい。

まず、以下のような回帰式を考える。

Y=a+bX+cD+e

Yは被説明変数、Xは説明変数、aは定数項、eは誤差項である。そして、Dはダミー変数であり、例えば大企業ならD=1、中小企業ならD=0というように、0か1かの値を取る。この場合、Dが0か1かによって、回帰直線の切片の値の大きさが変わることになる。

 

そして、次に以下の回帰式を考える。

Y=a+bX+cD+dDX+e

ここで、dDXという項が1番目の式から追加された。この項のことを交差項という。

ダミー変数と、説明変数が掛け合わされている。

 

この交差項があると何が分かるのか?そのために、D=0のときとD=1のときで回帰式がどのように変わるかを確認してみる。

D=0:

Y=a+bX+e

D=1:

Y= a+c+(b+d)X+e

D=0とD=1の場合では2つの違いがある。まず、切片の大きさが異なる(aかa+c)か。これは冒頭に見た回帰式と同様である。次に、説明変数の係数の大きさ(直線の傾き)が異なる(bかb+dか)。交差項を回帰式に組み込む意義は、この直線の傾きの違いを捉えることができるからに他ならない。

 

例えば「社外取締役の割合が高いほど企業価値は高くなる」という仮説をたて、回帰分析を行うことを考えると、Yは企業価値、Xは社外取締役の割合となる。さらに、例えば「製造業とサービス業で社外取締役の割合の増加が与える企業価値への影響は異なる」という仮説も同時に立てていたとする。このとき、交差項を取り入れることでこの仮説を検証できる。つまり、製造業をD=0、サービス業をD=1とし、交差項を回帰式に組み込むと、製造業の場合の接線の傾きはb、サービス業の接線の傾きはb+dになる。もし両者の傾きの値が等しい(つまりd=0)のであれば、産業の違いによって社外取の割合が企業価値に与える影響は変わらないことを意味する。一方、傾きの値が有意に異なれば、仮説を立証できたことになる。