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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

SDR(特別引出権)とは何か

本ページでは、SDR(Special Drawing Rights、特別引出権)とは何かについてまとめたい。SDRとは、一言でいえば、IMF(国際通貨基金)に加盟する国が引き出す権利を有する国際準備資産である。

 

ブレトンウッズ体制の崩壊 

まず、SDRが創設された背景にはブレトンウッズ体制の不安定化がある。ブレトンウッズ体制とは、各国通貨と米ドルの交換比率を固定するとともに米ドルは金との交換比率を固定するという、米ドルを基軸にした金本位制であり、1944年に締結された。

 

第二次世界大戦後の各国の経済復興の中、国際流動性(国際取引の決済に使用される通貨量)は増加し、ドルが大量に供給されることとなり、金の準備量以上にドルを発行することを迫られた。ベトナム戦争による米国の財政支出拡大等の理由も併せて、米国の国際収支は悪化、ドルの信頼が低下し始めた。

 

こうした中、金・米ドルを補完する新たな国際準備資産として、1969年にSDRが創設された。

 

なお、その後の1971年にニクソン大統領が金とドルの交換停止を発表し(ニクソン・ショック)、ブレトンウッズ体制は崩壊した。これにより、主要通貨は変動相場制へ移行し、SDRの相対的な重要性は低下することになる。

 

SDRの概要

IMFへの出資割合に基づいてSDRは各国に配分される。SDRを配分された国は、保有しているSDRと引き換えに、自由利用可能通貨(米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、中国人民元)を引き出すことができる。

 

例えば外貨準備だけでは対外債務(ドル建てなど)の返済が難しくなった際に、配分されたSDRと引き換えにドルを獲得することができる。

 

ブレトンウッズ体制崩壊前はSDRは一定量の金に固定され、1米ドルと等価値と定められた。ブレトンウッズ体制崩壊後は、SDRは通貨バスケットとして再定義され、2023年現在では上記の5つの通貨によって構成されている。1SDRに対する5つの通貨の構成比率は以下のページで確認できる。

SDR Valuation

 

(出典):

ブレトンウッズ体制と崩壊 | 公益財団法人 国際通貨研究所

特別引出権(SDR) | 公益財団法人 国際通貨研究所

IMF(2019)「ファクトシート SDR(特別引出権)」

IMF理事会、5年ごとのSDR評価見直しを完了 SDR価値バスケットの新しい比重を決定